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能がなくても爪は隠していた

「…あー」

進路、変更するか。


海に出て巡回を始めて少し経ったころ、それまで海を眺めていた我らが上司ジオ少将が呟いた。その小さな言葉を拾った隊の中でも古株と言える先輩が反応する

「ジオ少将?変更とは…」

「…航海士連れて来てくれ。南西の方角に進みたい」


それまで進んでいた方向と別の場所を指したジオ少将の思惑は誰にも予想がつかなかったが、ジオ少将に従うこの部隊の中にはジオ少将の意見に反対するものなど存在しない。例え配属後、年若い少将に反感を持っていてもこの部隊で過ごすうちにそんな考えは消え去るのだ。恐ろしく強い訳ではない。ただ冷静に、静かに物事に対処し、俺達平海兵を信頼して任せてくれる。危険があれば庇い、周りの目を気にせずに己の正義を貫く。


ジオ少将が掲げる正義それは『理不尽な正義』

これを見るたびに誰もが1度は顔を歪める。何を言っているんだ。こんなものを掲げるのは可笑しい。そう言いながらジオ少将を嘲笑う。
しかし、それでも少将はこれを変えなかった。誰もが理解しなくても、自分の指針なればそれでいいと前を向きながらいい放った。
まだ俺にはこの正義の意味が理解出来ないが、ジオ少将の背中を追えるのであれば理解できなくてもいい。俺らが考えていることの2歩も3歩も先を歩く少将には追い付けやしないのだ。

だからこそ、時折俺らが付いて来ているか確かめるように後ろを振り向くジオ少将に負担をかけないように、俺達は全力で追いかける。


_海兵Aの証言

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