×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

下手な鉄砲全く当たらず

「下手な鉄砲数打ちゃ当たる…か、生憎てめえらの球に当たってる程度じゃ生き残れないんでね。嘗めんじゃねえぞ海賊ども」

ジオ少将の近くに偶々いたコビーの耳に聞こえた低く呟いたように小さな声。自身を狙われ、降り注ぐかのごとく放たれる銃弾を気にもせず、一点に駆けていくジオ少将から目が離せない。刹那、瞬きをするような短い時間の間にジオ少将の姿は消えた。

「え!?ジオ少将!!?」

目の前から突然消えた少将を探すため、周りを見渡したコビーの視界に入ったのは空高く飛び、敵船に向かって落下している少将の姿だった。

____

ガチガチに固まったコビーとヘルメッポの周りを囲んだのは海軍の中でも様々な噂が流れるジオ少将の軍艦に乗る海兵達であった。

「お前らがコビーとヘルメッポか…」

「は、はい!」

がたいのいい海兵に睨まれた二人は肩を跳ねさせ、勢いよく返事をする。周りを囲んでいる海兵たちが無遠慮に見てくるが体が固まるだけで何も出来ない

「くれぐれもジオ少将に迷惑をかけるなよ」

恐らくこの船に乗る海兵の中でも上から数えられる武骨な海兵が低い声で言った。恐ろしさに勢いよく首を縦に振る二人、それと同時に船の中から甲板に続く扉が開いた。

「ジオ少将!お疲れ様です!」

扉から現れた人物は噂の少将本人で、近くにいた海兵が声をかけると答えるように頷く。コビーとヘルメッポの方をちらりと向いた少将は二人を気にした様子もなく、コビーとヘルメッポに声をかけた武骨な海兵を手招きする。すぐさま少将の元へと駆けていった海兵と共に少将が持っていた書類に向かい何かしらを確認しているようだった。

「あれがジオ少将…」
思わず呟いたコビーに同意するように隣で首を振るヘルメッポ。このときはまだまさかこの遠征で海賊と戦闘になるとは知るよしもなかったのだ。

____

扉を開け、甲板へと出るといつものごとく海兵たちから挨拶される。むしろ君達のがお疲れ様だろうに…俺船の中見回って来ただけだし。

いつも俺の補助してくれる…あ、いた。探し人はすぐに見つかったが、その隣に見慣れぬ二人の若者。とりあえず探してた部下を手招きし、駆けてきた所で聞いてみる。
「あれは…」

「はっ!ガープ中将からの命で今回の遠征に参加することになったコビーとヘルメッポです!」

………あ、忘れてた。そういえば中将からお願い(強制)されてた。二人寄越すから何とか指導しろよ?やれよ?やるよな?的な感じだった気がするけどとりあえず受け入れたのが数日前。だから今回参加してるんだななるほど。

「少将、今回科学班からの要請で〜」

てか今回の遠征どこ行くんだか…何か嫌な予感するから絶対何か起きるだろ。あー面倒くさい

…多分このとき、俺は部下の話をちゃんと聞くべきだったんだろう。


案の定遭遇した海賊との戦闘中、俺を狙ってきた銃弾の雨。そのわりには俺を避けるかのごとく一発もかすりもしない。

「下手な鉄砲数打ちゃ当たる…か、生憎てめえらの球に当たってる程度じゃ生き残れないんでね。嘗めんじゃねえぞ海賊ども」

俺は能力者とかな訳ではないから当たったら普通に怪我するし…少将とかやってるとまあ、な。

とりあえず逃げるために走り出したその瞬間、踏み込んだ足場が沈んだと認識した刹那、体全体に感じた浮遊感。

「はっ!?」

回る視線の中でとりあえず船からぶっ飛ばされたことだけは分かった。

「ちょ、待っ!!!」

跳ばされたら当然ながら落下するわけであり、次に感じた体の落ちる感覚。無理矢理体勢を整えようと持っていた刀を振り回しつつ、体を捻る。
地面に着くぎりぎりでなんとか着地の体勢へと持ち直したと思ったが、足が踏みつけたのは柔らかい感触。確かめる前に前にいた海賊を斬り倒す。足場を確認しようと下を向くが…人を踏んでいた。うわあ…。

嫌な予感に周りを見渡せば、周りにいるのは海賊たち。あ、…ここ海賊船のど真ん中だ。
驚き唖然としている海賊たちと、深く溜め息を吐いた俺と
あー…

「運が悪いもんだなぁ」

自分のことか海賊のことかは分からないが、ひとまずこいつらを捕らえないことにはどうしようもない。目の前に構えた刀をちらつかせ、今度こそ足を踏み出した。



「ジオ少将!早速試作品を使いこなすとは流石です!!」
海賊たちをあらかた捕らえ、壊れた場所の把握や被害の確認をしている時に駆け寄ってきた部下の言葉に唖然とした。え、試作品ってなに。
話を聞いたところ、今回の遠征の船には科学班からの要請で甲板の一部が弄られていたらしい。

「それでか…」

だから俺が空中にぶっ飛ばされた訳か。なるほど。

「科学班に伝えておけ。危険で使いにくい失敗作だと」

普通走りだした場所にんなものがあると思わないだろ。恨むぞ科学班。
最初に部下の説明を聞いてなかった俺にも非はあるがなんにせよ危ないし嫌だ、あんな驚愕体験。

「そうですよね、少将以外に使いこなせる奴はいませんよね!」

違う、そうじゃない。否定しようかと思った所で視界に入った桃色。確か中将のお願いで船に乗ってた内の1人…だと思うが、何故尊敬した目で此方を見てくる。おい、待て違うぞ!


この数日後、またジオ少将の武勇伝は増えていた。

prev / next

[ back to top ]