▼ 寂しい
三日月の夜、山の中微かに響くは女が逃げる音
それを追うのは数多の敵
居場所さえも分からなくなる暗闇の中、月明かりに晒された女の腹部は装束からも分かるほど血に染まっていた
「…っく!!これ以上は…無理、ね。」
自分の体から出た液体は纏っていた装束を赤黒く染めていた。
忍の敵は月だ、とか言うけれど最後に見たのが月というのはなかなか良いものじゃないかしら。
決して油断していた訳ではではない
むしろ準備は念入りだった。
けれど…、
「この様、か」
身体に力が入らなくなるのを感じるけれど
ここで足を止めて彼等に捕まるわけにはいかない。
先程学園に向かい離した飛鷹は無事に着いただろうか
可愛い後輩達はきっといいくのたまに成長するだろう
同室の彼女は気高く美しく生きるのだろうか
同輩の彼らは…まあ、きっと強く生きるのだろう
ああ、でも…
君への想いに蓋をしきれなかった私はひどく愚かで狡いのだろう。
決意は昔の内にしていた。
覚悟はもう決めていた。
それでも
彼らに、
君に、会えないことが…
そして彼女は笑みを浮かべ、
走り着いた崖から飛び降り谷底の川へと
堕ちた
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