何故――、こうなってしまったのだろう。
考えても考えても分からなかった。
『携帯型心理診断鎮圧執行システム、ドミネーター起動しました。ユーザー認証、狡噛慎也執行官。公安局刑事課所属使用許諾確認、適正ユーザーです。』
狡噛慎也はドミネーターを構えながら、目の前の女を見つめた。
「慎也――。撃たないの?」
「――お前は俺に撃てと言うのか?」
「だって私を殺すのは慎也の仕事でしょう?」
当たり前とでも言うように、女は笑った。
『犯罪係数、オーバー160。執行対象です。』
構えたドミネーターは非情な決断を下す。
慎也は初めてその引き金を引くのを躊躇った。
「――どうして。」
「ストレスケアを受けなかったのかって?だって――、行っちゃえば私は隔離されちゃうでしょう?慎也にも会えなくなるわ。」
「――なんでそんなにお前はサッパリしてるんだ。」
構えたドミネーターが早く執行しろとばかりに急かす。
『執行モード・ノンリーサルパラライザー。落ち着いて照準を定め対象を制圧して下さい。』
その時、丁度足音が聞こえて来た。
「早く私を撃たないと、常守さんか宜野座さんに撃たれるわよ?」
「俺は――。」
「私は彼女が妬ましかったのよ、慎也。」
その台詞に慎也はドクンと心臓が跳ねた。
「――やめろ。これ以上、犯罪係数を上げるな。」
「貴方の側にずっといられる彼女が妬ましかった。」
それでも女は尚も言葉を続ける。
その瞬間、後ろから常守と宜野座が現れた。
「狡噛さん!」
慎也の後ろから常守の声が聞こえる。
「――常守監視官!来るな!」
「慎也。早く私を撃たないのなら、私が彼女を撃つわよ?」
そう言って女が銃を構えた瞬間、ドミネーターが再び声を発した。
『対象の脅威判定が更新されました。執行モード・リーサルエレミネーター。慎重に照準を定め対象を排除して下さい。』
誰が為と君は問う「――狡噛。」
返り血を浴びて立ち尽くす狡噛に、宜野座は静かに声を掛ける。
「――パウンド3、執行完了。」
それは何の感情も含まない声だった。
宜野座は黙ったまま、狡噛の肩を叩いて常守を連れて消えた。
「――なぁ。わざと俺を煽ったのか?」
死ぬ間際、彼女は確かに笑っていた。
『これで良いのよ』と、満足そうに笑っていたのだ――。
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君の知らない世界で:企画提出作品
PSYCO-PASS//狡噛慎也
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました!
2012/11/26 天月レイナ拝
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