凛とした空気を纏ったその瞬間、彼の周りだけ世界が変わる。
見ているこっちも思わず息を止めてしまう程の存在感。
これだけの人数が集まっているにも関わらず、彼の周りだけしんと静まり返っていた。
圧倒的な存在感――。
防具から覗く片目が見つめているのはただ一点。
相手の隙のみ。
静かな間があって、そして相手が動いた僅かな隙をその男は見逃さなかった。
「――1本!伊達!」
わぁぁぁっと歓声が上がる。
彼が防具を取れば、黄色い声援が上がる。
彼の名は伊達政宗。
その容姿は去る事ながら、彼の剣道の腕は天下一品。
今年もインターハイ優勝の一歩手前まで来ていた。
「あっちぃ。Hey,名前!見てたか?」
「はい。完璧に入ってましたね。」
「当たり前だろ?俺が失敗するわけねぇ。」
「先輩以外が言ったら自意識過剰って笑われますよ?」
きっと彼を纏うあの凛とした空気の正体は、絶対的な自信。
良い意味で彼は自信家だ。
名前はドリンクを渡してやりながら、横目で政宗を見る。
「Ah?何だ?」
「いえ。カッコイイなって思って。」
「What?!急になんだよ?」
突然の名前の何気ない一言に政宗は思わず咽る。
「あ、すいません。いえ、スポーツやってる人ってやっぱりカッコイイですよね。」
「――Damn.」
「え?」
「――別に。アンタらしいなって思っただけだよ。」
「――?」
心の底から分かっていないのだろう。
自覚の無い名前に、政宗は苦笑する。
この後輩はどれだけアピールしてやっても微塵も気付かない。
それでいてたまにあんな事を言い出すから、正直こっちが振り回されてばかりだった。
「――名前。」
「はい?」
その瞬間、決勝のアナウンスが流れる。
政宗は立ち上がる瞬間に、流れるような仕草で名前の唇に自分の唇を押し付けた。
フライングスターター「せんぱ――?!」
「優勝したら俺に惚れろ。You see?」
ニヤリと笑った政宗に、名前はパクパクと口を開ける。
その様子をしてやったりとした顔で見れば、政宗は再び試合会場へと入って行く。
「これより決勝戦を始めます。」
結果は果たして――。
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player oath!!:企画提出作品
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました!
2012/08/04 天月レイナ拝
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