年齢とか関係ないって言うけど、そんなの綺麗事。
やっぱり彼と同い年の若い子には叶わないし、同じ土俵に立つ事さえ許されない。
仕方ないと分かっていても、この気持ちはどうする事も出来ないのだ。




ボーダス・アイヴユー






「――はぁ。人気者ね、アイツ。」


英語準備室からは丁度彼のクラスが良く見える。
朝からひっきりなしに彼の元へは女の子が押し寄せていた。

2/14 St.Valentine day

世の女子が浮き足立つこの日。
例にも漏れず名前も勿論チョコを用意したものの、肝心の恋人に近付くことさえままならなかった。


「あたしは教育実習生、アイツは高校生。仕方ないんだけどね〜。」


綺麗にラッピングされたチョコを見ながらポツリと呟く。
名前と彼――、白石蔵ノ介は中学時代からの付き合いである。
当時中学3年だった名前に、1年の蔵ノ介が一目惚れをして1年間ねばった上でようやく付き合う事になった。
当時から蔵ノ介はその整った容姿と柔らかい物腰、加えてテニス部の部長と言うのもあり女子から絶大な人気を誇っていた。
高校に行ってもそれは変わっていなかったようで、名前が今年教育実習生として高校に戻って来ると現実を嫌でも直視しなければならなくなった。


「――別に見えなかったら気にならないんだけどな〜。」

「何一人でボソボソ喋ってんねん。怖いで?」

「ぎゃっ?!びっくりした!急に話し掛けないでよ!」


不意に耳元で喋りかけられ、名前は飛び上がる。
加えて話し掛けて来たのが渦中の人間だったのだからたまらない。


「え?蔵?!え、なんで?」


先程まで見ていた教室を覗けば、確かにそこに蔵ノ介の姿は無かった。


「何?名前、こっから俺の事見とったやろ?名前から見えるっちゅ〜ことは俺からも見えてんねんで。」


その言葉に、名前は言葉を失う。


「――随分楽しそうだったわね。女の子に囲まれて!」


皮肉を込めてそう言えば、蔵ノ介は名前に寄り掛かって来る。


「ちょ?!蔵!誰か見たらどうすんの!」

「勘弁してや〜。カドを立てずに断るん結構疲れるんやで?しかも大量に押し寄せて来るし…。ホンマ悪夢やわ。」


その言葉に、名前は疑問を浮かべる。


「え?貰ってないの?」

「おん。当たり前やん。俺、名前のチョコしかいらんしな。」

「――あんなに一杯いたのに?」

「せやからこうやってエネルギー補給に来てるんやん。癒してや〜。」


甘えるように抱き付いて来る蔵ノ介は猫みたいで可愛い。
普段は格好良いくせにたまに見せて来るこの可愛いところがどうしようもなく好きだと名前は思った。


「――バカじゃないの。勿体ない。」

「なんで〜?だって別に好きじゃない子からチョコ貰っても嬉しゅうないやん。俺、別にそんなにチョコが好きなわけちゃうしな。」


金ちゃんなら片っ端から貰うんやろうけど、と言う言葉に名前は笑った。


「――欲しい?私のチョコ。」

「何やねん、それ。欲しい言わんとくれへんの?」

「私のチョコは高いのよ?」


クスクスと笑いながら、チョコを見せびらかせば蔵ノ介はニヤリと笑う。


「ほんなら今晩たっぷりとお返ししたるからちょ〜だい?」

「――バカ。」


チョコを渡そうと手を出せば、逆にその手を引っ張られて再び蔵ノ介の胸の中に落ちる。


「――蔵、人が――!」

「誰も見てへんよ。さっきチャイム鳴ってしもうた。」

「え?!」


慌てて時計を見ようと立ち上がろうとするが、蔵ノ介がそれを許さない。


「蔵ってば!」

「大丈夫やって。次俺は自習やし名前は何も授業あらへん。さっき確認したしな。」

「――用意周到ね。」


こうなった蔵ノ介はまるで駄々っ子のように言う事を聞かない。
それが分かっているので、名前は大人しく力を抜いて蔵ノ介にもたれ掛かった。


「――なぁ、さっき嫉妬したん?」

「何よ、急に?」

「こっちめっちゃ怖い目で睨んでたやん。嫉妬したん?」


顔を見なくても、楽しそうな声音でにやけた顔が頭に浮かぶ。
名前は思わず、蔵ノ介の頭を掴めば無理矢理深く口付けた。


「名前――ッッ?!」


呑まれるような深い口付けに、蔵ノ介の方が呆然とする。
少しの時間があって、離れた名前は下を俯いてしまって蔵ノ介は困ったように言う。


「な、名前?すまん、怒らせる気はなかってん。」

「――したわよ、嫉妬。悪い?」


そう言って顔を上げた名前の顔は真っ赤で。
蔵ノ介は思わず顔が綻ぶ。


「アカン。めっちゃ可愛ェ!」

「うるさい!可愛いじゃなくて愛してるって言いなさいよ!」

「おん。世界で一番愛してんで、名前。せやから来年もその先もずっと俺だけにチョコ用意してな?」

「――うん。」


本日2回目のキスは、まるでチョコレートのように甘かった。


HAPPY VALENTINE!!
(恋に制限なんてないんだから!)(恋セヨ、乙女!)


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BE MY VALENTINE!! :企画提出作品
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました!
2012/01/31 天月レイナ



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