終焉を願っていたのです、と。
その姫君は俺にそう告げた。
「終焉、でございますか?」
真田幸村は酷く困惑していた。
この姫は果たして自分に答えを求めているのだろうか。
それさえも分からなかったからだ。
「姫はこの世界がお嫌いか?」
それはようやく出た疑問。
もしかしたら彼女の意にそぐわぬ質問であったかも知れない。
けれど幸村は純粋に尋ねて見たかった。
「この世の全てが嫌いでした、以前は。」
「では、今は?」
ゴクリ、と。
自分の喉が鳴る音が鮮明に聴こえた。
彼女の真っ黒い目が幸村を射抜く。
漆黒のその目はまるで底が見えず気を抜いたら落とされてしまう気がした。
「貴方がいるのならこの世界も捨てたものじゃないかも知れないわ。」
彼女の言葉はやはり幸村に取って不可解でしか無かった。
そこに愛はあるのだろうか彼女との出会いは本当に偶然だった。
戦の帰りに海を見たくなって足を向ければ今まさに海に入ろうとしている彼女の姿を見付けた。
「早まってはならぬ!」
慌てて海に入り彼女の肩を掴めばその目はキョトンとしていた。
「ご無礼を許されよ!けれど早まってはならぬ。」
「…貝が綺麗だったのです。」
「貝?」
そう言って彼女の手に乗っていたのは色とりどりの貝殻だった。
幸村はへなへなとその場に座り込む。
「なんだ…。てっきり…。」
「自殺でもすると思いましたか?」
「あ、いや…。」
口篭った幸村に彼女はクスクスと笑う。
「…自殺する程、この世界に執着などしていないわ。」
そう言った彼女は酷く浮世離れしていて、そして美しかった。
「某は真田幸村と申す。名を聞いても良いだろうか?」
「今日はダメ。また会えたらその時は教えて差し上げますね。」
そう言って魅惑的に笑った彼女は、まるで天女のように見えた。
この感じた事のない気持ちの正体を知りたくて俺は今日もこの場所を訪れたのだった。
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花吐き:企画提出作品
戦国BASARA:真田幸村
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました。
2011/10/17 天月レイナ拝
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