始まりは噎せ返るような夏の日だった。
「――本日よりお側に仕えさせて頂きます。」
ミンミンミンと忙しなく蝉が鳴いていた。
――否、泣いていた。
「Alright,顔を上げな。」
そう言って顔を上げた女の顔は真っ直ぐに俺を見つめて来た。
その瞳に背筋が震える気がしたのは何故なのだろう。
「良い目だ。俺が憎いか?」
側に近付けば政宗は女の顎を掴む。
けれども女は特に臆する事も無く視線はそのまま、真っ直ぐに政宗を見つめていた。
「――まさか。愛しております、我が君。」
「――ッッ!!」
迷いの無い声で、静かな声で、抑揚の無い声で、女はそう告げた。
それは見事に政宗の心を撃ち抜いて行った。
――ドクン、と。
かつてないぐらいに心臓が揺れ動いた気がした。
「――Marvelous.」
女の目は好ましいもので、政宗は口角を上げてそう呟けば貪るように口付けた。
もしもきみが吐いた嘘にキスひとつできたならそれが愛になるのだろうか女は武家の娘だった。
そしてその家は伊達に滅ぼされる寸前だった。
その女に一目惚れをした政宗は権力に物を言わせて、女を娶った。
――つまり、彼女を渡せば助けてやると。
愚かな当主は勿論その条件を呑んだ。
そうして召抱えられた哀れな娘。
きっと自分を蔑むのだろうと、そう思っていた。
だから敢えて愛していると告げてやろうと、そう目論んでいたのに。
予想は見事に撃沈。
女は自ら愛してると云った。
「――さぁ、Partyを始めようか。」
化かし合いの愛憎劇は今始まったばかりなのだから。
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曰はく、:企画提出作品
戦国BASARA:伊達政宗
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました。
2011/10/11 天月レイナ拝
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