佐助と暮らし始めて気付けば3年になる。
別に結婚しても良いんだけど、何だかそのままになっててでもそれがとても心地良い。
3年も一緒に暮らしてれば、決まり事みたいなものが自然と出来て来て。
その数が日に日に増えて行くのがとても幸せだと思うのだ。
――例えば。
必ず朝食は一緒に食べようとか、行って来ますとお帰りなさいのキスは絶対にしようとか。
それを規則にしてしまうと窮屈で仕方ないけれど。
佐助はそう言うところが上手いから、気付けばしないと変な感じがしてしまう。
良い意味で習慣になったんだなぁと心のどこかで思った。
今日も目覚ましが鳴り響く。
キッチンからは良い匂いが立ち込めていて、佐助はもう起きて朝食を作ってくれてるんだと思った。
朝に弱い私とは正反対に佐助は朝が強いから専ら朝食当番は佐助。
夕飯は私か二人で作る事が多い。
今日の匂いからすると和食っぽいから夕飯は洋食にしようかなぁとか考えていると部屋のドアが開いた。
慌てて寝た振りをする為に目を閉じると、佐助が中に入って来た気配がする。
きっとまだ寝てる私を見てしょうがないなぁって笑ってるんだと思う。
「おはよ、お寝坊さん。狸寝入りしてないで起きてよ〜?」
すっかりバレていたらしく、佐助はカーテンを開けながらそう言う。
「…分かってた?」
「当然。何年一緒にいると思ってんの?」
布団から罰が悪そうに顔を出せば、佐助は笑いながら私の額にキスをする。
「ん〜、お早う。佐助。」
「おはよ。」
チュッとリップノイズを響かせてキスをすれば、私の一日が始まる。
夢だってどこだって、一緒にいる「今日ね、佐助の夢を見たよ。」
「俺様の?どんな?」
テーブルには既に美味しそうな出し巻き卵と味噌汁が並んでいて食欲をそそる。
コーヒーでは無くて緑茶を用意してる辺り、流石佐助だなぁとか思ってしまう。
「覚えてない。でも幸せな夢だった。」
「そっか。俺様も今日お前の夢見たよ。」
「え〜?二人して何やってんだろうね?」
「良いんじゃない?バカップルなんだし。」
クスクスと笑いながら言えば、佐助も笑う。
本当にこの人は私には勿体無い人だと思う。
見た目は文句無いし、家事にも積極的。
仕事だって保育士なんかしてて、何しろ優し。
付き合って5年、一緒に暮らして3年経った今も一度も喧嘩した事ないのは佐助が怒らないからだと思う。
「――ねぇ、佐助。これからもずっと一緒にいてね?」
向かいに座った佐助にポツリと言えば、佐助はキョトンとした後に笑った。
「何?当たり前じゃん。俺様がお前から離れる事なんてないよ。」
「うん、知ってる。でも言いたかったの。」
「変なの。――そうだ。もうすぐ同棲記念4周年なの覚えてる?」
「あ、そっか。もう1年経ったんだ。早いね。」
去年3年目と祝ったのがついこの前の事のようだ。
毎回交際記念日と同棲記念日は必ず外で食事をする決まりにしているから、今年はどうしようかと思案する。
「今年はさ、ちょっと変わったとこ行かない?」
「変わったとこ?」
「うん。市役所とか。」
「――は?」
言われた意味が分からず首を傾げたら、佐助は棚から一枚の紙を取り出す。
「…コレ。」
「うん、婚姻届。そろそろ結婚しない?」
「唐突。」
「だって何かきっかけがないと言い辛くてさ。」
佐助ががしがしと頭を掻くものだから、思わず笑ってしまう。
「――こんなあたしで良ければこれからもお願いします。」
「うん、こちらこそ。」
何だか改まったのがくすぐったくて佐助と私は目を合わせて笑った。
そんないつもと同じようで少し違う日曜日。
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愛し日々:企画提出作品
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました。
2011/08/06 天月レイナ
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