木曜日は憂鬱だ。
だってまだ君に会えないから。
俺は俺でまだ部活に追われているし、君は君で仕事に追われている。
「――ハァ。会いたいなぁ。」
知らず知らずのうちに出たため息に、気付けば仁王がこちらをニヤニヤと見ていた。
「…何?仁王。」
「別に。あの社会人の彼女か?」
「他に誰がいるのさ。」
「お〜お〜、熱いのう。」
からかうように言われるが、別に知ったこっちゃない。
俺は学生で彼女は社会人だけれど、別に大した問題じゃない。
たまたま恋をした相手の立場が違っただけ。
たまたま恋をした相手が少し年上だっただけ。
――そう、それだけなのだ。
「――幸村。携帯鳴っとるぜよ。」
「え?あ、本当だ。仁王、休憩かけといて。」
「了解ナリ。」
部長の特権はこう言う時にフル活用しないとね。
聞き慣れたそのメロディは、彼女専用のもの。
「――もしもし?」
『あ、精市〜?ごめんね、今大丈夫?』
「うん。丁度、休憩だからね。」
『良かった。私、グッドタイミングね。』
電話の向こうで話す彼女の声は俺の心を確実に癒して行く。
君が作るタイミングなら、いつだって俺がグッドタイミングに変えてあげるから。
「まだ仕事?」
『うん。今日も残業。でも土曜日に仕事入れたくないから頑張るよ。』
「ふふ。頑張って。でもあんまり無理しないでね?」
『そう言う精市もね。あんまり部活はりきって土曜日ダウンしちゃ嫌よ。』
「まさか!そんな事するはずないじゃないか。――愛してる。」
『――うん、私も。』
ため息が春風にメロディが七色に君がまぼろしになる木曜日君に会える土曜日まで、後二日――。
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無条件降伏:企画提出作品。
(テニスの王子様:幸村精市)
素敵な企画に参加させて頂き、有難うございました。
2011/07/26 天月レイナ拝
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