「雅治ッッ!」
「会いたかったぜよ。」
ギュウッと私を抱き締めるこの男は、世間に認められる『彼氏』では無い。
けれども私は週に2回、必ずこの男と会っている。
それはきっと寂しさを埋めるため。
仁王雅治と言う男もきっとそうなのだ。
似た者同士の私達は、お互い相手がいるのにそれでも満たされない。
どれだけ強欲で、そして貪欲なんだろうか。
「お前サンは悪い女じゃのう。」
ククッと楽しそうに笑えば、雅治は私の髪の毛を優しく撫でる。
その手付きが厭らしくて好きだ。
仁王雅治は中学生の癖に酷く色気がある。
きっとそんなところも夢中にさせられた理由の一つなのだろう。
「――そうね。私、悪い女なの。でも…、雅治もでしょ?彼女にバレたら泣くんじゃない?」
「そうかも知れんのう。でもお前サンはバラしたりせんじゃろ?」
確信的な笑みを浮かべて言われると、悔しいが頷くしかない。
耳元で「じゃから好きなんじゃよ」と聞こえた時には、やられたと思った。
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彼女は寂しがり屋だと思う。
俺が見てきた女の中でも、群を抜いて寂しがり屋。
そして誰よりもその孤独の拭い方が俺に似ていた。
言葉に頼らないで、温もりに縋る。
そんな方法が誰よりも自分に似ていたからこそ、彼女を求めたのかも知れない。
「――雅治、好き。」
男がおるくせに何も躊躇せずにアイツは俺にそうやって愛を紡ぐ。
それは酷く滑稽で、でもだからこそ何より俺の心に響いた。
これが傲慢だと言う事は分かっている。
世間で言う『浮気』と呼ばれる行為であるのも分かっている。
けれどもその想いの根底にあるのは、純粋な寂しさを埋める為。
「俺も愛しとるぜよ。」
だから俺も純粋に愛を紡いでやろうと思うんじゃ。
さみしがりなんだ僕は嗚呼――、つまり。
俺達は似た者同士の愚か者であると言う事実。
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浮気:企画提出作品。
素敵な企画に参加させて頂き、有難うございました。
2011/07/26 天月レイナ拝
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