それは最初で最後の告白でした――。



















「俺様さ、結婚するんだよね。」


幼馴染の彼は唐突に私に言った。


「けっ、こん?」


その時の私の顔と言ったら滑稽だったに違いない。
難しい単語ではないのに、漢字変換が出来なかった。
ヘラヘラと笑いながら


「まぁ名前もさ、さっさと良い旦那見付けて結婚しなよ?」


なんて、その男は吐き捨ててくれた。


(バカらしくって涙も出やしない――。)


その男の名は猿飛佐助。
私の所謂幼馴染で、そしてずっと好きだった男。
別に純粋にずっと佐助だけを思ってた訳じゃない。
彼氏だって何度か出来た。
でも…、どうしても忘れられなかった。
初恋の男は忘れられないとは良く言ったものである。


「…結婚って、なんでよぉ…。」


あんなにヘラヘラしてるくせに、実は面倒見が良くて。
実は料理も出来て何より男前。


「そりゃ優良物件だよね。」


ずっと側にいたのに、今の関係が崩れるのが怖くて何も言えなかった。
私は臆病者だ。


「うぅぅぅ…、嫌だよぉ。十年越しの想いを舐めんなよ…。」


この行き場の無い思いはどうしたら良いのですか。













多分きっと、人生で一番滑稽な告白を決意した。



















(いつもの公園で待ってる。)


味気の無いメールだけど、今までで一番送るのに勇気が必要だった。
きっと涙で崩れるしスッピンなんて何度も見られてるから、敢えて化粧はしない。
いつもの公園に向かえば、佐助がベンチに座っているのが見えた。
夕日に照らされたオレンジの髪は燃えるように綺麗で、既に涙が溢れそうになる。


ジャリ、と。


後ろで砂音がした。
靴の音で分かる。
彼女は少し歩き方が左にずれているから。


「…名前?」

「――そのまま聞いて。」


立ち上がって後ろを振り返ろうとした佐助を、名前は制した。


「…佐助。ずっとずっと言えなかったんだけど。言わなきゃ後悔すると思ったから――。」

「…うん。」


二人を夕日が静かに照らしていた。


「…あたし佐助の事が好き――。ずっとずっと、好きでした。」


声が上擦った気がする。
一呼吸置いて、佐助が振り向いた。
その顔はどこか哀しそうで。
そしてバカだなぁって笑ってた。


「――知ってる。」


嗚呼――。
ずっとずっとバレていたのだ。


「…一つだけ教えて。あたしのこと、好き?」


涙は自分の意思とは関係なくて。
ぽろぽろと零れては、地面へと落ちて行く。


「――うん。」


そっと佐助の親指があたしの涙を拭う。


「…結婚、おめでとう。」

「――うん。」


佐助は『うん』としか答えてくれなかったけど。
それでも良かった。
だってずっと伝えたかった思いは伝えたのだから。


「幸せに、なってね?」

「名前も、ね――。お前の幸せを一番願ってんのは、俺様だよ?」


そう言って飄々と笑う佐助はいつもの佐助だった。







最初で最後の告白








人生初の告白が玉砕決定だったなんて、10年経てばきっと笑い話になるのだ。






-----------------------------
『さよなら、初恋。』提出作品。
素敵な企画に参加させて頂き有難うございました。

2010/09/12 天月レイナ拝


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -