幸せを求める私をどうか許さないでと願った。
貴方の側で幸せを求められなかった私は世界で一番の咎人なのだろう。
『俺が戻るまで待っててくれるか――?』
そう言って貴方は私の前を去った。
あの頃幼い私はそれが出来ると思っていた。
心の支えは稀に届く貴方からの手紙。
それだけだった。
だけどそれはいつしか私の心を蝕んで行くようになる。
「名前、お前はいつまでアイツを待つ気だ?」
「歳。言わないで。待つって決めたの。」
私の事も彼の事も良く知ってる歳三が言う。
彼が私に恋心を抱いているのは気付いていた。
知っていて知らない振りをしている私は最低だと心のどこかで思う。
縋れば無下にされないのを分かっていて、側にいるのだから――。
だけどそうでもしないと壊れてしまいそうだった。
小指の約束と引きちぎった赤い糸「名前――。俺と結婚してくれ。」
歳三の目が姫を射抜く。
その迷いのない瞳は、名前の決断を燻らせた。
「少し考えさせて――。」
前の私ならきっとすぐに断っていたのだろう。
だけど――、この恋には終わりもないけれど始まりもないのだ。
「――左之。疲れちゃったよ。」
あんなに大好きだった貴方の顔が今は記憶の中でも霞んでいく。
きっと次の手紙が届く頃、私はもう貴方のモノじゃない。
鬼灯より転載
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