僕の愛は狂気だと言った女がいた。
その女は僕だけを愛して僕だけの為に死んで行った。
――否。
この手できっと僕が殺したのだ。









愛してる(それは宛ら死刑宣告)








僕の紡ぐ愛は狂気だと名前は云う。
でもそんな名前が可愛くて、愛しくて、そしてどこか憎らしかった。

その目で他の人を見ないで。
その口で他の人の名前を呼ばないで。
その手で他の人に触れないで。

この気持ちが異常だなんてとっくに気付いている。
今更そんな感情、持ち合わせていなかったんだ。

目を反らして反らして反らして――。
気付いたらもう戻れないところまで来ていた。
そう、ただそれだけのこと。



「総司、悲しいの?」


か細い声で名前は僕の名を呼ぶ。
そっと下から伸ばされた手は酷く弱弱しくて。
守りたいと同時に壊したいと言う衝動に駆られた僕は、きっと狂っている。


「何でそう思うの?」


グッ、と――。
首に回した手に力を込めれば、名前は小さな声で呻いた。
その恐怖に歪んだ顔が世界で一番僕を駆り立てるのだと、どうすれば伝わるのだろう(なんておぞましい!)




だけど、



名前はそんな僕を許すかのように、頬に回した手に力を込めた。



「――いいよ、総司。あたしの事、壊しても。それで貴方が満たされるのなら。」

「名前は――、僕が好き?」


ぽたり、ぽたり。
名前の顔に垂れていくのが僕の涙だと気付いたのは、いつの事だっただろう。
それを拭いもせずに、名前は笑った。


「当たり前、でしょ?総司の愛を受け止められるのは、きっと世界であたしだけ。」

「――僕は。君より先に死ぬなんて耐えられないよ。」


本来なら僕が名前より先に逝くのが、明日の天気よりも明確な事実で。
でも酷く臆病な僕はそんな事実を認めることなど到底出来る訳がなかったのだ。


「――総司、あいしてる。」


その言葉は、きっと引き金。
気が付けば僕は無我夢中で名前に口付けをして、そしてそのまま彼女の首をこの手で絞めた。
暖かかった彼女が僕の手によって冷えて行く。
底冷えをするようなその事実に、どこか安心を覚えて、そして怯えた。


ねぇ、名前――。
僕達はどこかで間違えたのだろうか?





きっと君は、そんなことないよって微笑んでくれるのだろう。





「あいしてるよ、」


きっともう君の耳には届かないと知っているのに、僕はまるで呪いようにその言葉を紡ぐのだ。








鬼灯より転載


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テーマ「人外ファンタジー」
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