シロガネ山に戻った次の朝から、レッド指導による私の特訓が始まった。
画面越しで鍛えていた三匹は元が物凄く強かった為、どちらかと言えば私の指示の的確さや技の応用の特訓だ。やっぱり、ゲームと違って生き物同士のバトルだと攻撃の仕方も変わってくるから面白い。

面白い発見は他にもある。
キティの特性は静電気。キティとインは付き合いがかなり長いせいか、インは飛行タイプにも関わらず電気に強いらしい。逆に、レディとキティは毒に強かった。レディは三匹の中で一番体力がないから、じわじわと削られる毒系の技は一番避けたい。その点で、毒に強かったという事実は本当にありがたかった。


「フシギバナ、眠り粉」

「イン、竜巻でフシギバナに向けて吹き飛ばして」

「あ、」

「今だ!渾身の力で熱風!」


レッドのフシギバナが、眠ったまま倒れる。
私の横で観戦していたキティとレッドのピカチュウが拍手をくれた。・・・嬉しいんだけど、君まで喜んだらダメなんじゃないかなピカチュウ君。

インはフシギバナの傍まで飛んで心配そうな顔をしているけれど、レッドが「大丈夫」と言ったところで安心したらしく、私の元へ一目散に飛んできた。優しい良い子に育ってくれていて、トレーナー冥利に尽きる。


「ありがと、イン!あとおめでとう!」

「キィ!」


嬉しそうに擦り寄ってくるイン。少し怪我をしているので、「後で傷薬塗ってあげるね」と言えば、インの笑顔が綻んだ。


「ミチル」

「ん?どした?」

「もう昼過ぎてる」

「え、もうそんな時間だったんだ」


どうやら、特訓に集中し過ぎてて気付かなかったらしい。ポケギアで時間を確認してみると、確かに昼過ぎ・・・というか、もう二時近い。


「ごめん、レッド。お昼食べよ、お腹すいたでしょ」

「ん」


生活している空洞に戻り、レトルトのカレーを温めている間にインとレディへ傷薬を塗ってあげた。キティにも塗ってあげようとしたら、彼女は全く怪我をしていないという衝撃的な事実が発覚したのだけれど、この子なんでこんなに打たれ強いんだろう。むしろ、キティと戦ったレッドのカビゴンの方がボロボロだった。申し訳なさ過ぎる。


「あ、そうだ」

「?」

「私ね、日曜日の午後に出掛けてくるよ」

「・・・なんで?」

「エリカさんから女の子限定のお茶会に誘われたの」


そういえば、と思い出しレッドに報告すれば、カレーによって上昇していたレッドの機嫌が急降下した。


「・・・僕も行く」

「いやいや、女の子限定だからね?」

「外で待ってる」

「えー・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・うん、わかったよ・・・暇でも知らないからね」


相変わらずな無言の圧力に押され、溜め息を吐きたい気持ちでそう言えば、レッドは満足げに「ん」と頷く。


「何でそんなに行きたいの?タマムシに用事でもあった?」

「・・・ない、けど、」

「?」

「・・・トキワで絡まれたってグリーンに聞いた」

「え゙」


あの草食系男子め・・・!
レッドにチクったのか!


「今度絡まれたら僕が殺・・・助ける」

「・・・・・・」


ちょ、今この子「殺す」って言いかけなかったか!?
何それなんでそんなに心配されてんの私!?
そんなに頼りなく見えるのだろうか・・・というか私に絡もうとする奇特な奴がそうそう多いとは思えないんだけど。

レッドが頑固なことは何となく気付いていたけれど、過保護過ぎやしないだろうか。
レッドの彼女になる子は本当に大変そうだと思った今日でした。






過保護者
(これでも護身術使えるんだけどな、私・・・)




2011.11.06



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