結局、レッドの抱き枕にされて寝た昨日。
レッドがお風呂に入っている間にグリーン、エリカさん、ナツキさんの番号は登録したものの、夜遅くに連絡するのは迷惑だろうと考えて、朝メールすることにした。
今のところ、アドレス帳のフォルダ分けは、"家族"と"ジム関係"だ。色々と有り得ない気がする。

だって、所謂有名人ばかりなわけですよ。レッドなんか伝説なわけですよ。
今の時点でこのポケギアをオークションとかに出したら、確実にすごい値段になると思う。そんな非常識なことしないけど。

それから朝になって、レッドからポケギアを買って貰ってしまった旨を、三人にメールで伝えた。一番早くメールが帰ってきたのはグリーンで、


[アイツ無駄に金持ってる筈だから、搾り取ってやれよ(笑)]


だそうだ。
やっぱり、レッドは金銭感覚がクルクルパーになる程お金を持っているらしい。私も人のことは言えないのだけれど、レッドはひど過ぎる。

次にメールが帰ってきたのは、ナツキさん。


[愛されてるわねぇ☆]


・・・確実に誤解していらっしゃるので、必死にレッドとはそういう関係ではないというか、レッドは恋愛の"れ"の字も理解していないような超ド級の鈍感だということを説いた。
そのままメールのラリーが続き、いつの間にかナツキさんのことを"ナツキ姉"と呼ぶことになった。親しくなれた感じがして、とっても嬉しい。

エリカさんからメールが帰ってきたのは、ママお手製の冷し中華を食べ終わった頃。


[連絡いただけて嬉しいですわ。今度タマムシジムの子達でお茶会がありますの。よかったらミチルさんも参加してくださいまし]


何とも嬉しい、お茶会という名のガールズトークのお誘いである。
しかし、[喜んで!]と返したメールへの返信に、私の笑顔が引き攣った。


[そういえば、セキエイリーグのチャンピオンさんから、ミチルさんのことを聞かれましたわ。お知り合いだったのですね]


・・・・・・・・・・・・。

・・・知り合いといえば知り合いかもしれないけれど、ただの顔見知り程度でしかない。何よりあの人、会話のキャッチボールが下手くそだから、いくら美青年でもあんまり関わりたくないのが本音である。


[連絡先を知りたがっておりましたけれど・・・教えても?]


エリカさんには悪いけど、全力で断固拒否をさせて頂いた。どうせ知り合いになるのなら、シンオウチャンピオンのシロナさんがいい。確実に美女だろうシロナさんなら、喜んで教える。

それに、美青年は好きだけど、どちらかと言えばマツバとかゲンみたいな無気力系の方が好みのタイプなのだ。いや、嫌いじゃないけどね、電波系。多分クダリとかも電波系だろうし。(サブウェイの双子大好きなのだ)
単純に、会話が面倒臭いだけで。

かちかち、かちかち、メールを打っていたら、横からレッドが抱き着いてきた。
ピカチュウの毛繕いが終了したらしい。


「どうしたの?」

「・・・」

「レッド?」

「・・・・・・ポケギア、買わなきゃよかった」

「は?」


昨日強引に押し付けてきた本人が、何を言い出すことやら。


「・・・・・・ミチル、ポケギアばっかり」

「え?」

「・・・朝からずっとメールしてる」

「・・・・・・・・・」


えーっと・・・あー・・・。
これはあれか、


「レッド、拗ねないでよ」

「・・・拗ねてない」

「はいはい」

「・・・本当に、拗ねてない」


レッドのサラツヤな黒髪を、わしゃわしゃと撫で回す。しかしまぁ、そんなむっつりした表情で否定されても、説得力がまるでない。


「あ、そうそう」

「?」

「シロガネ山帰ったらさ、バトルの指導して欲しいんだよね」

「・・・別にいいけど」

「レッドに鍛えられたら確実に強くなれるし・・・それでさ、レッドの山での目的終わったら、ジョウトは勿論、ホウエンとかシンオウとか行ってみようよ」

「!・・・そ、だね」


ふにゃりと笑うレッドが可愛い。思わず抱き着き返してしまった。
あー、レッドいいにおいするなぁ・・・癒される。

ただ、強くなりたいというのには、他にも理由があったりする。
レッドが山に篭って二年ちょいということは、あともう少しでロケット団が復活して、その瞬間に解散しなきゃならないとかいう、かなり悲劇な展開が待っている筈だ。

まだ会ったことがないから、ロケット団幹部やサカキ様の本当の性格なんて、知らない。
でも、解散はどうしようもないとしても、だ。ゲームの中でもあれだけサカキ様を求めていた幹部の人達に、再会させてあげたい。そして、出来るなら保護して、あの無駄に賢い頭脳やカリスマ性を表社会で生かすような道を作りたいんだ。

その為には、私自身のバトルセンスを磨いて、カントーのジム制覇・・・という名の荒稼ぎをして、ついでにジムバッジゲットでトレーナーとしての権力を手に入れなくてはならない。
この世界では、ポケモンバトルの強さが権力に繋がるようだから。

素晴らしくシンプルな社会で、誠に助かる。

・・・レッドに、罪悪感がないわけじゃない。むしろ後ろめた過ぎる。

レッドが何を思ってロケット団を潰したのかは知らないけど、もう少しすれば、ロケット団が復活したのかもしれない、というような噂も流れる筈。その時に、聞いてみようと思う。
その理由によっては、立ち回り方も随分変わると思うから。


「レッド・・・」

「なに?」

「私がどんなに馬鹿なことしても・・・見捨てないでね」

「?当たり前」


その言葉、信じてるよ、レッド。

だって君は、私がこの世界に来て一番最初に助けてくれた恩人で、こんな短期間の間に、空っぽの私へ沢山のものを与えてくれた、






世界で一番大事な人
(なんだから、さ)




2011.06.20



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