やっとグリーン君がいるらしいトキワジムまで着いたものの、ジムトレーナーの方に通せん坊をくらってしまいました。


「グリーン君の知り合いなんですが・・・」

「そう言ってグリーンさんに近付こうっても、そうはいきませんよ!」

「そうだそうだ!」


何やら彼等と話していると話の内容が見えてきた。

グリーン君はイケメンだし、その上一度チャンピオンにもなり、今はジムリーダーだ。知り合いを名乗ってお近づきになりたいファンが後をたたないのだろう。
私は本気で知り合いなのに、なぁ。


「はぁ・・・これ以上、虚言と真実も見抜けない愚か者さんと話しているのも面倒なので、一辺にかかってきていいですよ。その変わり、こちらも二匹使用させて頂きますから」

「「上等だ!!!!」」


私は既に出ていたキティに加え、インを出す。
しっちゃかめっちゃかに掛かって来るポケモン全体を見渡し、インに視線を送った。


「超音波」

「キィ!」

「う、ぐぁっ・・・!」
「あ、たまが・・・!!」


人間まで混乱させて欲しいわけじゃなかったけれど、ある意味好都合かもしれない。
次はキティに目配せする。


「広範囲に電磁波」

「ぴっか!」


ジムトレーナー一括成敗☆
なんて言っている場合ではなく、私に用があるのはグリーン君なのである。

矢印だらけの床を、すいすい滑っていく。町並みや売り物がゲームと違っても、ジムの構造は変わらないらしい。
実は最短ルート記憶済みの私は、難無くグリーン君の元へ辿り着けた。


「挑戦者か・・・って、ミチル!?」

「はろー、グリーン君」

「え、ちょ、おま」

「動揺し過ぎですよ」


わたわたしているグリーン君。さっき微妙にかっこつけてたから、ジムトレーナーとか挑戦者にあのヘタレっぷりは出していないのだろう。やっぱり麻痺させてよかった。


「今日ね、レッドとタマムシデパート行ってきたので、グリーン君にお土産買ってきたんですよ」

「ああ、サンキュ・・・つーか、お前ここまでどうやって来たんだ?」

「グリーン君の頭が足りないファンの方に間違われて大変不快でしたので、皆さんには混乱して何が何やらわからない苦しさと麻痺で動けない歯がゆさをプレゼントしてきました」

「・・・俺、お前の敵じゃなくて良かったと心底思える」

「そうですか?そこまで酷いことしてないんですが」

「・・・(こいつロケット団よりヤバいんじゃねーか?)」


顔を青くさせるグリーン君は無視して、ポシェットから可愛い袋に入った品物を取り出す。


「お土産です」

「開けていいか?」

「もちろん」

「・・・・・・靴紐?」

「皆さん同じランニングシューズを履いてらしたので、せめてもの個人主張として靴紐を変えたら楽しいと思ったんです。ちなみに、私は水色と銀、レッドは黒と赤ですよ。全部ラメ入りで可愛くないですか?」

「あー、成る程な!いーこと考えんじゃん」


そう言って、私の頭を撫でるグリーン君。人に頭を撫でられるのは好きだ。
優しかった頃の"お母さん"も、こうしてよく頭を撫でてくれたっけ。


「そういえばさ、お前ポケギア持ってねーの?」

「残念ながら・・・欲しいには欲しいんですが、今は目的の為にファイトマネーとかも貯蓄しておきたいんですよね・・・」

「そっかー。ま、なら買ったら連絡くれよ?これ、俺の番号だから」

「あ、ありがとうございます」


グリーン君から受け取った紙を、元の世界で使っていた一点ものの手作り皮財布(柄はチャーミーキ○ィ)に入れる。今日だけで、エリカさんにナツキさんにグリーン君と、かなりの有名人の連絡先をゲットしてしまった。ワタルさんにも会ったし。

あ、ワタルさんで思い出した。


「グリーン君、」

「あ、グリーンでいいぜ?そんな歳変わんねーんだし、敬語もなしな!」

「了解であります。で、グリーン、」

「なんだ?」

「トキワシティに入る直前、無礼講で下品で低レベルな人間以下が二つ転がってるから、ジュンサーに突き出すでもトキワシティの安全を守るジムリーダーの特権で制裁するも、好きにしてね」

「・・・・・・絡まれたのか?」

「うん」

「・・・・・・」


捕まれた腕を腕まくりすると、案の定手形の青痣が出来ていた。家に帰ったらママに湿布貰わなきゃ。


「安心しろ、ミチル。ジュンサーさんじゃ生温いからな・・・トキワシティのゴミは俺が躾てやるよ」


ヘタレは何処へやら。
ブロンズの瞳に怒りの炎を燃やし、怪しい微笑を浮かべたグリーンに、私は心の中でナンパ男に合掌した。






相手を選びましょう
(グリーンの印象、)(ヘタレ改め、怒らすとこわい草食男子)




2011.06.16



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