「・・・・・・!?」


朝起きたら、元の世界に戻ってました――ではなく、とんでもない美人の寝顔。
こんな心臓に悪い寝起きは初めてですよコノヤロー。


「・・・えっ、と」


熟睡中らしいレッド君は、トレードマークの帽子を被っていない。で、彼の右腕が私の頭の下で、多分左腕が腰に回っている。
・・・純粋そうに見えて、意外と経験豊富だったりするのだろうか?


「・・・・・・」

「・・・スー」


今何時なのかもわからないし、起こすのは躊躇われる。だけど、さっきビックリしすぎて、二度寝は私が無理だ。

どうしよう。

出来るだけ静かに体を動かしてみるものの、レッド君はピクリとも動かない。昨日から思ってたけど、彼は細っこい癖に腕力が強いようだ。なんか理不尽。


「・・・・・・・・・はぁ、」


どうしようもなさそうなので、折角某アイドル事務所もビックリな美少年が目の前にいることだし、観察してみることにした。

艶やかな黒髪は、手入れなんてしてないんだろうけど、すごくサラサラしてそうだ。睫毛も濃いし長い。この白い肌は、確実に肌荒れとかしたことないんだろうな。鼻筋も通ってて、最早芸術と言っても文句はないだろう。

・・・なんか、完璧すぎて惨めな気分にもなれない。この少年の欠点を見つける方が大変だ。
こんなレッド君とお互いにライバル認定するくらいなのだから、グリーンだってさぞ美形なんだろう。旅の最中に告白されまくったりしなかったのかな。

でも、瞼を閉じてしまっているのが、ちょっと物足りない。レッド君の一番の魅力は、多分あの透き通るような赤い瞳だと思う。
バトルの時は、あの瞳に炎が宿るのだろうか。

見たいけど、見たくない。
目が逸らせなくなってしまったら、後戻りなんて出来なくなってしまうだろう。
こんな競争率高そうな子(しかも精神年齢はかなり年下)に、片思いなんてごめんである。


「・・・ん、ミチル・・・?」

「おはよう、レッド君」

「おはよ・・・・・・」


目を覚ましたレッド君。やっと解放されるのか、と思っていたら、突然視界が真っ暗になった。


「・・・ふぇっふぉふん」

「・・・あったかい」

「・・・ふふひいふぇふ」

「んー・・・?」


いや、あの、苦しいんだってば!
抱きしめるのはもういいとして(甘えたがりだと思うことにするよ!)、後頭部ガッチリホールドで顔面を胸板に押し付けられたら普通に苦しいって!

両手でトントンと叩けば、やっと本当に解放された。


「ぷはっ!」

「・・・ごめんね?」

「何で疑問形なんですか」


もう、いいよ。よくわかんないけど、なんか楽しそうだから怒る気力萎えたよ。

小さく溜め息を吐くと、レッド君はくすりと笑った。
うわぁ貴重!


「ミチル、起きてたの?」

「はい、レッド君の寝顔観察してました」

「え゙・・・」

「非常に眼福です。ありがとうございます」


カッと、赤くなったレッド君。反応が初々しい。仕返しですよコノヤロー。

それにしても、さっきから貴重な表情ばかり見せてもらっている気がする。私の心の引き出しに、レッド君の表情専用が出来そうだ。

可愛いもの(ポケモンとレッド君)と、綺麗なもの(ジョーイさんとレッド君)で溢れてるこの世界は、本当に素晴らしい。
私とか完全にモブキャラだろうけれど、目玉が幸せだから大満足だ。自分の顔を鏡で見るよりも、ポケモンとかレッド君を見る回数の方が一日で多いのだから。


「それで、今日は知り合いの方が来るんですよね?」

「うん」

「レッド君の知り合いは美人さんが多そうで楽しみです」

「・・・面食い?」

「可愛いと綺麗は正義なんですよ。目から取り入れる癒しなんですから」

「・・・ふぅん」


あれ、何でちょっと機嫌傾いた?
年頃の男の子は難しい。


「まぁ、一番の目の癒しはレッド君ですけどね(人間だと)」

「!」


今度は照れるのか。
口数少ないし無表情だけど、レッド君は雰囲気でなんとなくわかる。大人になったらポーカーフェイス極めちゃうのかしら。お姉さん寂しいわ。


「あ!そういえば、今日はポケモンセンター行くんですか?」

「・・・昨日の夜に風呂入ったから」

「朝ごはんどうします?」

「携帯食残ってる」

「じゃぁ、それでいいですね」

「うん」


頷いたんだけど、レッド君は一向に離してくれない。


「レッド君、離してくれないとご飯食べれません」

「・・・もうちょっと」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・しょうがないですね」


私今、見た目は君より二つ下ということになっているんだけど、明らかにレッド君の方が年下だ。年上扱いしようとする方が難しい。


「・・・その代わり、レッド君のポケモン図鑑見せてください」

「ん・・・はい」

「ありがとうございます」


レッド君は頭の後ろ辺りを片手でごそごそ探し、昨日もチラ見したポケモン図鑑を貸してくれる。
ゲームの時とは違い、リアルな写真みたいで、とても楽しい。


「・・・うわぁ」

「・・・どうしたの?」

「やっぱり、リアルなギャラドスの顔怖いなって」

「・・・そう?」

「私の世界に、こんな凶悪な顔をした生き物はキレた恋人か深海魚くらいでしたから」

「・・・彼氏いるの?」

「彼氏はストーカーに進化しました」

「・・・・・・」

「ミューツーも捕まえたんですか?」

「・・・キャッチ・アンド・リリース」

「自然に優しいレッド君ですか・・・あ、フリーザー綺麗ですね・・・」

「・・・ボックスにいる」

「まじですか」

「逃がしたら帰ってきた。見たい?」

「見たいです!」

「今日見せてあげる」

「レッド君崇め隊立ち上げたいです私」

「・・・そんなに好きなんだ」

――ガタッ、

「レッドー!言われたもん買って来たぞうわあああああ!!!?」

「・・・」 「・・・」


イケメン美少年が現れたと思ったら、顔を真っ赤にして一瞬で走り去ってしまいました。

なんぞ?






美形の嵐
(寧ろ、嵐のような美形)




2011.06.14



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