今日は、幼なじみのレッドとグリーンとお出かけです。

ジムリーダーで忙しいグリーンが、私の成人祝いと、レッドの下山祝いで、「俺の奢りで飲み行こーぜ」なんて素敵なことを言ってくれたから、私たち二人はそんなお言葉に甘えちゃったのです。(レッドが遠慮の一言も言わなかったのはここだけのお話)


「ここ!ここだよ!私の行きつけのラーメン屋さん」
「へぇー・・・何かアレだな。コガネっぽくないっていうか・・・どっちかっつーと、マサラにありそうな店だな」


そう。私たちは今、コガネシティに来ています。
それにしても、マサラタウンからコガネシティに来るまで、レッドのリザードンに乗らせて貰ったのですが、やっぱり、ちょっと怖かったです。私のピジョンよりも、数倍・・・いや、数十倍は速いのです。


「ここはね、穴場なんだよ!お店の外見はあれなんだけど・・・ご飯はすっごく美味しいの!何年も通ってる常連さんだっているんだよ!」
「何年って・・・すげーな。創業何年なんだよ・・・」
「・・・・・・・・・僕、こういう店、好き」
「レッドなら解ってくれると思ってたよー!!」
「ちょ、俺だって好きだからな!」
「・・・対抗しなくていいんだよ?」
「違ぇー!!!」


レッドと二人でグリーンをからかっていたら、店の奥から人が近づいて来ました。このお店の店長さん(57歳)です。


「お?ナナシちゃんじゃねーか!久しぶりだなぁ!」
「おじさん、久しぶり!」
「なんだなんだ〜?今日は両手に花ってかぁ?二人ともイケメンだし、ナナシちゃんもやるねぇ」
「違うよー!二人は幼馴染なの!」
「で、そこのイケメンお二人さん、ご注文は決まったかい?」


店長のスルースキルには、思わず感心してしまいます。しかし、誤解されたままなのです。
二人も反論してよ、と、レッドとグリーンに視線を送りますが、彼らもスルーです。虐めでしょうか。


兎に角、私はいつもの"もやしラーメン"、グリーンは"チャーシューメン"(大盛り)、レッドは"塩ラーメン"を頼みました。ついでに、グリーンは餃子も頼んでいたのですが、相変わらず昔から大食らいですね。食の細いレッドと足して二で割ったら丁度いいんじゃないんでしょうか。


「飲み物は?」
「俺は生ね!」
「・・・僕は、梅酒のソーダ割り」


ここは洒落た居酒屋ではないので、お洒落なカクテルとかはありません。


「ナナシは何にすんだよ?アルコール初体験だろ?」


そんなグリーンの疑問と、レッドの無言の疑問に、私は「ふふふ」と笑みを漏らします。


「おじさん、奥さんは〜?」
「あ?今日は厨房にいるぞ」
「じゃぁ、私は奥さんに直接頼むから、おじさんはレッドとグリーンに用意してあげてね」
「あいよー」


厨房に向かう途中、振り返った時のレッドとグリーンの頭の上には、クエスチョンマークが沢山飛んでいました。
そんな疑問も、今に解決してあげますよ。


「奥さん!」
「わぁ!ナナシちゃん!?」


厨房でタイマーとにらめっこしていた店長の奥さん(49歳)に抱きつくと、お母さんみたいな匂いがします。もう五十になるというのに、この綺麗な奥さんにはビックリです。将来はこの奥さんみたいな女の人になりたいものだと、よく思います。


「前から頼んでおいたあれをお願いしたいのです!」
「あらあら・・・じゃぁ、遂に?」
「はい!遂にです!」


奥さんは厨房からこっそりと客席を覗き、ニヤリと悪戯に笑いました。そんな笑顔も魅力的です。


「素敵じゃない!」
「でしょでしょ?」
「私はここで見てるから、頑張るのよ」
「ありがとうございます!」


るんるん、ステップを踏み出しそうな気持ちで席に戻ると、グリーンとレッドの前には注文通りのお酒がきてました。


「あれ?二人とも飲んでないの?」
「・・・・・・待ってた」
「主役置き去りにして先に飲めねーだろ」


ポケモンのバトルが強くなって、背も高くなって、声も低くなって。でも、二人の優しい所は昔から変わっていないようです。


「で?お前の酒はいつくるんだよ?」
「ちょっと待っててねー」


にやにやしながら待っていると、今度は店長ではなく奥さんが私の飲み物を運んできました。


「お待たせ、ナナシちゃん。それにしても、綺麗系と可愛い系ねぇ・・・勿体ないわぁ」
「ありがとう、奥さん!」


私の前に、注文したお酒のグラスが置かれます。勿体ないのは重々承知ですが、これは仕方がないことなのです。


「・・・そんなの、メニューにあったか?」
「特注なの!」
「・・・・・・っていうか、それ、なに?」


真っ赤な液体の入ったグラスを見て、グリーンもレッドも首を傾げています。


「ビールとトマトジュースを割ったやつだよー」
「・・・へぇ」
「よりによって、何でそんなチョイスなんだよ」


グリーンさん、私はその一言を待っていました。何も知らないのに私の計画の一旦をになってくれるとは、流石幼馴染。


「お酒が飲めるようになったら、絶対一番最初にこれを飲もうって決めてたんだ」
「・・・ふぅん」
「・・・・・・・・・レッド、お前、この酒の名前知ってるか?」


どうやら、グリーンは気付いたようです。顔が青白く見えるのは、気のせいでしょうか?


「ナナシ、これ、何て言うの?」


首を傾げるレッドに、私はドキドキする胸を押さえながら、精一杯言いました。


「"レッドアイ"だよ!レッドの眼と同じ名前!」
「・・・・・・・・・・・・」


昔からとんでもなく鈍いレッドは、気付かなかったのでしょうか?黙り込んでしまいました。
しかし、数秒後。


「・・・・・・・・・ッ!?」


真っ赤な顔になったレッドなんて、貴重な物を目撃した私は、畳みかけるように用意していた言葉を言います。


「私の一番最初は、レッドだって決めてたんだよ」


ついに、耳から煙が出そうなくらい、レッドは真っ赤っかです。しかし、相変わらず黙っています。私なりの、一世一代の告白だったのですが。


「レッド、返事もスルーなの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「レッド?」


不審に思った私が身を乗り出すと、グリーンが私を制して、レッドの前で手を振りました。


「・・・ナナシ」
「ん?」
「お前の告白が強烈過ぎて、半分意識飛んでる、こいつ」
「え!?」


そんなにショックだったのでしょうか。
レッドにとってはただの幼馴染かもしれませんが、私にとっては、昔からレッドは私の王子様だったというのに。
しょんぼりする私の頭を、グリーンが優しく撫でてくれます。グリーンは本当のお兄ちゃんみたいなので、大好きです。


「二番目に飲むのはミドリマティーニにするよ、お兄ちゃん・・・」
「誰がお兄ちゃんだ」


笑っているグリーンの笑顔に癒されます。レッドは、未だに現実と夢を彷徨っているようです。
しかし、その赤い瞳に光が走りました。思わず身構えると、頭上でパシンという音。
ゆっくりと目を開けば、私を撫でていた手を振り払われて茫然としているグリーンに、まだ耳だけ赤いレッドがいます。グリーンの手を払ったのは、レッドのようです。


「・・・ナナシ」
「え?うん?」
「・・・今日は、コガネに泊まろう」
「え?え?あ、うん!」
「・・・グリーンは帰って」
「・・・・・・・・・」


これは、返事が"OK"だということなのでしょうか。口下手なレッドの言いたい事の全てはわかりませんが、多分そういうことなのでしょう。


「・・・レッド」
「ん?」
「だいすきです」
「・・・・・・・・・うん」


昔から大好きでしかたがない無口な幼馴染は、今日から私の恋人です!




本命はレッドアイ
「さて、俺は自棄酒でもすっかな」
by グリーン




2011.04.10




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