いっそのこと死んでしまおうか…
何ヵ月ぶりかにエドガーに呼ばれて彼の部屋の大きなベッドに体を埋めながらそう考えた。
近くに散らばった衣服を拾う元気もない。
結局私は彼にとって都合のいい玩具なのだ。
はじめの頃は愛がなくともこういった行為をエドガーが私にしてくれることが嬉しかった。
だけど、今は、すべてが辛い。肌を這う彼の体温も、口を塞ぐ彼の唇も、このときだけは優しい指先も全部、全部が辛いの。
シーツをギュッと掴んで、布団に潜り込んで泣いた。
彼がシャワーから出るまでは、泣かせて。
染みる傷口。
「くそっ、」
シャワールームの壁を何度も何度殴りながら、なまえを思う。
体を重ねるごとに離れていくなまえの心をどうしたら、繋ぎ止められる?
重ねるごとにますなまえへの欲求をどうすればいいんだ?
「なまえ…」
そろそろなまえもシャワーを浴びたいだろう。
シャワールームから上がりバスローブをはおってなまえを予備に行くと泣き声が聞こえてきた。
「なまえ…」
被った布団の上から、そっと撫でると泣きはらした顔がひょっこり出てきて私を睨んだ。
「何で私をそんなに嫌うの?」
ストレートなその言葉に私は何も返せず横に寝転がった。
「私、いつも辛いの」
そうだな。好きでもない男に抱かれるなんて嫌だろう。
「私は、エドガーの事が大好きなのに、エドガーは私を嫌う」
「えっ…」
私らしくない言葉が飛び出した。
私を好きだといったのか?
いつもお前を強いたげる男を好きだといったのか?
諦めていた思いが、思いがけないところでチャンスを得た。
「こんな私を愛していると言うのか?
じゃなかったら、こんな呼び出し応じない。
返された言葉に胸が熱くなる。
「私は、素直になれないんだ。なまえを愛していると言うのに、冷たくしかせっせない、最低な男なんだ。」
「じゃあ、そんな男に惚れた私はバカな女ね。」
歪んで歪んで歪んで、
「死んでしまえばいいって思った…私にだけ冷たい貴女が憎かった。けど、憎いと思うほど愛しかった…」
恐ろしい単語を発する薄ピンクの唇が飾る口を塞いで、言葉で表せない私の思いをぶつけた。
「大好きなのよ、嫌いになれないの」
「嫌いにならないでくれ。嫌いに、ならないでくれ…」
「なれない…嫌いになったりしない」
何があっても
妙にハッキリした言葉に安心した私は、細く壊れてしまいそうに繊細な彼女を抱き締め眠りに落ちた。
(嫌いにならないわ。だから、貴女は私のものでいて?)
眠る彼の首に赤い花を咲かせ、私は彼に寄り添った。
…後書き……
私が書くとなぜかシリアスとか報われない系に走るんだよね。エドガーさん何回か短編書こうとしたのに悲恋やら死ねたやらになってしまって、やっとこさちゃんと書いたこれも、なんかね…。
あっ、ちなみに最後の一文の取り方で、微糖とも死ネタとも取れるように書いたつもりです。
キスマークもしくは、銀魂のピラ子ちゃんが言う的な赤い花。
いつか、普通に甘い夢書きたいです。では、失礼します