「とりっく、おあー、とりーと?」


切れ長の目をぱちぱちとしばたかせる仙蔵は、私にどうしたんだと問いかけた。

きっと、私の言ったとりっく、おあー、とりーとの事についての質問だ。

私は、先ほど南蛮通の友人から聞いた不思議な言葉を仙蔵に試してみたのだけど、発音が悪かったのか、もともと仙蔵が知らなかったのか通じなかった。

ちょっと悲しくなり、先ほど友人に聞いた説明を反復すると、仙蔵は優しく笑って私を手招きして引き寄せた。


「生憎、今私は菓子を持っていなくてな。○○は、どんな悪戯をしてくれるんだ?」


意地悪なことを言いながら私の頭を優しく優しく撫でる仙蔵にすり寄りながら、私はどうしたものかと頭を捻った。

悪戯なんか思い付かない。これが後輩の鉢屋なら直ぐに名案が思い付くんだろうな…。


「困ったわ…私の頭じゃ悪戯なんか思い付かない」


シュンと肩を落とすと、仙蔵は頭を撫でるのを止め


「トリック・オア・トリート」

と私よりいくぶん良い発音で不思議な言葉を口にした。


「私は、ちゃんとお菓子用意したのよ。中在家君に教えてもらって、ボーロ焼いたの」


はい。と、お皿に乗せたそれを渡すと、美味しそうに食べてくれた。


「美味しいよ」


と言いながら。





気の効く君に甘いお菓子を


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