「今日の兵助は甘えたさんね」
後ろから私に抱きつく兵助の様子がいつもとちがう。普段ならこんなにくっつくことはない。嬉しいけどちょっと恥ずかしくなってきたから、離してくれるように言うため後ろを向いた時、私はやっと気づいた。
兵助が泣いている。
普段感情を出さない分、こうやって感情を表に出しているなんてよぽどの事なんのね。
「兵助…」
白い宝石
「もう、豆腐くらいで泣かないでよ。また買ってきてあげるから…」
初めて○○が買ってきてくれたのに、
と落としたことを悔やむ兵助に思わず笑ってしまう。豆腐にそこまでかけられる人なんかあんまりいないわ。
可笑しくなって笑っていたら、兵助が頬を少し膨らませて豆腐を落とす原因を作った三郎をゲシゲシ蹴り出したから慌てて笑うのをやめた。
「兵助が食べたいって言うなら何回でも買ってきてあげるからさ、」
「わかった。」
ギュッとまた抱きつく彼の頭を撫でてやる。
豆腐の事になると本気で落ち込む彼はきっとはたから見たらおかしい人物だろうけど、私はどうも可愛くて仕方ない。
白い宝石に目を輝かせ、落として泣く彼にまた買ってきてやろうと密かに決心するのだった。
(兵助お土産だよ)
…後書き……
捧げ物没作品
bkm