「お前は、居なくなってしまわないでしょ?」


ふっくら形のよい薄紅色の唇が彩る小さな口から、その言葉は紡がれた。
俺は、その言葉に返すことができず、じっと自分より背の小さな姫を見ることしかできない。


漆黒よりも黒く、艶やかな黒髪とは正反対の真っ白で細い腕が俺の袖をすがるようにギュッと握れば、震えが伝わってくる。


「お父様、母上様、皆死んでしまったわ。お前までいなくなったら、私はどうすればいいのかわからない。」
「安心してください。姫を受け入れてくれる城が見つかりました。姫様は、若様と一緒に一刻も早くお逃げください」


大きな目にたっぷりと涙をため、瞬きする度に落ちるそれを失礼と思いながらもそっとぬぐってやる。


「留、私は、」
「言ってはいけません。」


小さい頃から知るこの美しい主人とは、今夜でお別れだろう。

思えば、この城に勤められたのも学園の仕事で姫と知り合ったからだ。姫には何から何まで世話になって、俺はその優しさに甘えていた。

姫が俺をどう思っているか知っていても、俺がその思いと同じ思いで姫をみていようと、それを言葉にしてはならない。
いかなる時であっても。と、逃げてばかりいたのに優しい姫はそんな俺に悲しそうに眉を下げるも何も言わないでくれた。


「留三郎、お前をあんな危険な所へやりたくない。」
「それが俺の仕事なんです。」
「そうね…でも、」
「時間です。」


それきり交わす言葉もなく、俺は姫の背を押した。







そして、姫は安全な所へ

俺は、敵本陣の後ろへ向かった。忍が本陣に突っ込むなんて知ったら、潮江の奴何て言うかな…。



「例えこ、の命失おうとも、貴女が未来笑ってくれるなら俺は…」



幸せです。



重なり合わせられなかったこの手に鋼の冷たさを持って、俺は死に場に単身乗り込んだ。

○○様、この身滅びようとも俺は、貴方を愛してる。



(留三郎、お前のいない世界で私にどう幸せを見つけろと言うの?)





平行世界は崩れ落ち





(留三郎、今日の放課後どっか行きましょう。)
(テスト近いぞ。平気か?)
(数学意外ならなんとか…)
(たく、今日はファミレスで数学やるぞ…)
(うっ…)
(チョコパフェおまけ付き)
(あーん。してくれるなら数学頑張る)



留三郎私ね、未来いつか太平の世があるならば、同じ身分で貴方と出会い、普通の恋をしたいです。



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