あぁ、なんで彼はそうなんだ。

ちょっとの段差で転んで、分かりやすい落とし穴に落ちて、いつもいつも私をビックリさせるんだ。

何やってるのかと怒れば、眉を下げてごめんねって言うんだ。


そんな彼が戦で大怪我を負ったと聞いたときは心臓が止まるかと思った。

くのたま長屋から飛び出して医務室に走った。いつもの足の鈍さが嘘みたいに私は凄い速さで彼の元へ走りついた。


「伊作…」


命の危険はないと、付き添っていた留から聞いたけど、やっぱり落ち着かない。

くのたまならこのくらいで動揺なんかしちゃいけないのに…私やっぱり向いてないんだな。

血が多量に出たのだろう…いつもより青い傷だらけの顔。


普段のドジでついた傷とは全くもって違うそれに、心臓が痛い。


「伊作、もう怪我なんかしないで、」


布団の中の手をギュッと掴んで、祈るように呟いた。




3.不安を消したかったからで、





貴方が居なくなったらとどうしようもなく不安になった。



(C)確かに恋だった
http://85.xmbs.jp/utis/『僕がきみの手を5題』


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