「ねぇ、左近」


久々の休みだから、左近とお出掛けしたくて誘いに来たのに、左近はさっきから教科書ばっかり見てる。

一応彼女なんだから少しはかまってくれたって良いじゃない。

「乱ちゃんに美味しいうどん屋さん教えてもらったの」
「伊作先輩に新しく出来たお団子屋さん聞いたの」



だから、一緒に行こうよ?

さっきから何回も声をかけてるのに、左近は聞こえてないと無視をする。


「むぅ、ならいいもん。三郎次と行くし。」


無視されるのが悲しくて仕方ないから、三郎次を捕まえて話し相手になってもらおう。

そう思って寝転んでいた私はすっくと立ちたがってさぁ行こうと足を踏み出したらすっ転んだ。


「痛いっ」


打ち付けた腕を擦りながら、転んだ原因…掴まれた足を見て、視線をずらして左近を睨む。

「行くな…」
「へっ?
おいおい、行かないで欲しいからってそれはないよ左近くん」



顔を赤らめてそっぽを向く左近くんの可愛さに免じて今回は許してやろう。


どうせ、とっさに私を掴んだのは"行くなよ"って言葉が出なかったからでしょ?




1.言葉にならなかったからで、





「許して欲しいなら、今から外に出掛けましょう?」
「……わかった。」


ちゃんと分かってるよ。
デートの後、三郎次にからかわれるのが嫌だから外出たくなかったんでしょ?でも平気だか安心して?なんか言おうとしたら、三郎次をくのたま皆でボコるから。

はずかしがりやで照れ屋で可愛い君は何も気にせず、私とのデート楽しめば良いんだよ。



(C)確かに恋だった
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『僕がきみの手を5題』


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