まだかな?
まだだろうか。愛しの旦那様のご帰宅はいつになるやら。
「まったく、いつもいつもどうやったら取っ替え引っ替え可愛い子を捕まえられるのかしらね。」
毎回違う香水を身に染みつけて帰ってくる彼にもう私は諦めている。
ちゃんと私の所に帰ってきてくれるならもうそれで良いや。そんな感じで新婚生活から過ごしてる私ってやっぱりおかしいのかな?もういっそうのこと私も浮気してみようか。そうしたら何か分かるかもしれない。ちょっと嫉妬してくれないかなとか思ってみたけど、どうせ嫉妬なんかしてくれないだろう。最初から諦めよう。
「そうだ…誰にしよう」
浮気する事決めたなら、誰にするか決めなくちゃ。
まぁ、軽くお食事とかするだけで良いんだよな…それなら知り合いとかが良いな。
円堂君とか風丸君誘ったらきっと説教食らうからな…ヒロト君とか、不動君とかならつき合ってくれるかな?
「メールしてみよう…
士郎からの連絡が無くてむしゃくしゃして転がしっぱなしにしていた携帯を取り上げて、電話帳を開いて彼のアドレスを探す。そう言えばかなり前に士郎のことでメールして以来だったなアド変えていないと良いんだけど。
士郎奴なんか変えても教えないからたまに本当に連絡とれなくなって、秋ちゃんとかに聞いたりするんだよね。それめっちゃ悲しいからそろそろちゃんと教えるようにして欲しいな。
って、いつの間にか士郎のこと考えているし何してるんだろう私。
今から私は彼にメールするんだから、士郎の事なんか良いじゃない。
「なんて打とうかな…」
「誰に打つの?」
「あっ、お帰り士郎。どうせ食べてきたでしょ?一応夕飯冷蔵庫にあるから、お腹減ったら食べて良いよ。」
いつのまにか帰ってきた旦那様にちょっと驚いたけど、まぁ気にしないいつものことだし。
だから、
なんて打とうかなぁと考えながら、いつもの台詞を士郎に言った。
いつもならお腹いっぱいだからお風呂入ってくると言ってすぐに行ってしまうんだけど、今日は何かソファーに寝そべる私の横に座ってきた。
「なに?」
「ねぇ、誰に打つの?」
そして、さっきと同じ事を今度は低い声で聞いてきた。
「ん?…ヒロト君か不動君」
「なんで?」
「一人の夕食に飽きたから誘おうと思って。」
「なんで僕を誘わないの?」
「だっていつもいないし。士郎も可愛いこといる方が楽しいでしょ?」
「うん。」
「ほらね。」
思った通りだね。やっぱりそう返すんだ。
私なんかより可愛い子は五万といるもんね。その子達とのお食事のが楽しいよね…
つか、浮気しまくるならなんで私と結婚難かしたんだろうこの馬鹿。
「可愛い子と食事するのは楽しいけど、○○が他の男と仲良くするは気分悪いな。」
「うわ、何それ。」
「怒った?」
「正直ムカツクしウザイ。」
「うん」
「でもなんか、メールする気は無くなっちゃったよ。」
「それはよかった。」
この男は、本当に自分の事しか考えてないよな。まぁ、許しちゃう私も私だけど。だけど今日はココで食い下がる気はない。
「メールする気なくなったから実家に帰ること電話しようかな…」
「えっ?」
「では士郎君。しばらくさよならしよう。」
「まって、○○がいないなんて嫌だよ、僕」
「反省したら帰ってきてあげるし、掃除洗濯はやって上げるから安心して。」
「いやだ。」
「もう、じゃあ君は何をしたいんだい?」
「○○に嫉妬して欲しい。」
「嫉妬?はじめのころマジ切れしても止めなかったじゃん。」
「嬉しかったからつい…」
「意味分かんないし、馬鹿」
「もうしないから、僕から離れないでよ」
「あぁもう、そんなこと言われたら出ていけなくなっちゃうじゃない!!私ばっかり士郎のこと好きみたいでムカツク。」
「僕だって負けないくらい好きだよ。僕が愛してるのは○○だけ。」
この野郎どの口がものを言うか、
さんざん他の女抱いといてほざくよな。そんな男と縁をきれない私も私だけどさ、何か納得いかない。
「次はないからね」
「うん」
納得はいかないけど、最終的に傍に居たいのは私の方だったみたい。
確証もない言葉にコロッと意思を曲げられちゃってさ、私こそ本当にバカみたい。
メランコリーな待ち時間。
それから、士郎の浮気は、パタリと止んだ
「あんた、ほんとにムカツク」
それが嬉しくてつい、私は悪態をつくのだった。