待たない。
絶対に待ってやんない。


「○○ちゃん待って」


一学年下の伊作との出会いは、くのたまと低学年忍たまの混合授業のペアになったことだった。

どんくさいのか不運なのか…よく転けては私に待ってと泣きそうな声で言ってきた。

私は、待ってやるつもりは少しもなくて、さっさと先に行ったものだ。
(そうしなくちゃ、授業終わらないし。)


伊作とは、混合授業の後も委員会やらなんやらでなんだか一緒にいる機会が多かった。
委員会の買い物に付き合ってやる事になったときなんかもあって…


「待って○○ちゃん」
「何やってんのよあんたは。」
「ちょっと落とし穴に落ちちゃって…あはは」
「バッカじゃないの?あんた忍たま3年生でしょ?
一緒にお使い行ってやるんだから私の足引っ張らないでよ。」
「うん。わかってるよ…」


悲しそうにまぶたを伏せ呟いた伊作を私は何となく置いて先にスタスタと学園を出た行ったものだ。

慌てて私を追おうとしたものだから足をもつれさせ伊作が転けた事が何となく分かったけど、私は足を止めずに歩いた。(あの子は忍たま。甘やかしちゃいけない。)




それから2年が経って、いよいよ私は最高学年となり、彼は5年生になった。

ふわふわの髪に優しい笑顔。
可愛らしい顔立ちのくせに意外にしっかりした体。
私より大きな手。

男となったくせに伊作は未だに転けたり落ちたり忙しない。

そして、私の後ろを追いかけている。

なぜ、伊作は私の後ろにいるんだろう。
私の前になぜいないんだろう。

ちょっとしたイライラは、もうすぐ終わる。卒業はもう、目と鼻の先…


「私も卒業か。」
「卒業しちゃうんですね。」
「留年しろって?」
「いっいえ、そんなつもりじゃなくて…ただ、○○ちゃんいないの寂しいから…」
「あんた、忍びに向いてないね。本当にさ」


よく言われます。呟きながら悲しそうにまぶたを伏せる。

2年前と同じだ。


「やめなさい」
「えっ…?」
「甘えた子犬みたいに…あんたは忍たまなの。
甘えないでよ…甘やかしたくなるでしょ。」
「○○ちゃんは、僕を甘やかしたりしないじゃないか。」
「しないわ。あんたは私に追い付いて追い越すの。」
「○○ちゃん?」
「だから、甘やかしたりしないし…だから、待たない。」


私は、いつも期待していた。
伊作が私を追い越すことを今か今かと…。

私より本当は優秀なくせに、不運なせいで本来の力が出せてない(本人は分かってないみたいだけど)。

もったいないなぁ…ホントに。


「○○ちゃん…僕すぐに立派な忍者になって○○ちゃんの手を引っ張れるようになるよ。だから、その時まで待って「待たない。」

可愛いこと言う伊作につい意地悪をしてしまった。





待たない。





「○○ちゃん…僕のこと嫌い?」
「好きだけどさ、いじめたくなるんだよね」
「結構雰囲気よかったんだけど、」
「怒らないでよ…伊作ごめんってば」


拗ねた伊作を後ろから抱き締めると、もういいよ と優しい声が聞こえてきた。

「伊作、待ってはやんないけど…伊作は私を捕まえるでしょ、いつも(伊作は、最後にはちゃんと追い付いて私の手を掴む)。」
「そうだね…何だかんだで」
「だから、私が卒業しても何だかんだで見つけて、捕まえてくれるでしょ?」


期待してるよ?


にぃーと笑ってやると、ほんのり頬を赤らめて伊作が笑った。

(大好きだよ)
(僕も。)


待たない。
それは、あんたに期待してるから。





…後書き……

企画
なんでもないの。


忍たま企画初投稿^^
何本か書いた中から友達に選んでもらいました〜。

綾部といさっ君で悩んだけど、ランキング1位だったいさっ君にしてみました・・)/


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