「はぁ……」
ため息がこぼれる。
目を閉じゆっくりと開ける。
もしかしたら、見間違えじゃないかと思ったから。
でも、現実はやはり変わらない。
追いかける君。
「ねぇ、伊作。いつまでやってるの?」
彼が落とした包帯やらなんやらを拾い集めながら穴の中にいる彼に声をかける。
「ちょっと捻ったみたい。包帯一つくれない?」
自分で手当てするのだろう。穴に包帯を投げ込みながら一人納得した。
保健室までそう遠くはないし、固定して歩けばなんとかなるだろう。(私は助けてやるつもりはない。いつもの事だけどね。)
器用に足を固定すると腕の力で上へ出てきた伊作。
「器用なもんね。」
そのまま足を穴の中に入れたまま縁に座る伊作の隣に座ってちょっと様子を見てみる。
ふわふわな髪。
優しい目。
可愛いくせにしっかりした体。
私より大きい手。
私の大好きな伊作。
「なに○○?」
「伊作を見てたの」
「えっ?」
キョトンとした目で私を見る伊作が可愛い。
「大好きな伊作を見てたの。」
「あっ、えっと…えっ大好きな…」
驚いたり顔を赤くしたり、困った顔の伊作が好きだから意地悪したくなる。
「うん。」
ひょいと立ち上がった私は、いまだ混乱している伊作を置いて保健室に向かった。
「置いてくね。」
「普通、置いていくよ?って言わない?」
慌てて私を追おうとした伊作は自分が怪我していることを忘れていたらしく歩き出そうとした瞬間、痛そうに呻くことになった。
バカだなもう。
だけど、私は振り返らないし、伊作を待たない。
待たない。(だって、後ろを追いかけてくる伊作が可愛いから。)
その後、泣きそうになりながら文句を言う伊作を私はかまってやった。