「佐久間君が、ペンギンのぬいぐるみ持ってる…」


すごい光景を見てしまった。

あのサッカー部の眼帯美少年があんな可愛らしいものとセットなんて、


「鼻血ものだ…」



パックのオレンジジュースの最後をジュっと吸い上げた後、思わず呟いてしまった。


「あっ、写真取っとこう。」


忘れないうちにお土産にと写真を撮っておいた。





ペンギン君。





「にしても可愛いなぁ…」


至福の休み時間にのんびりと携帯画面をニヤニヤしながら見ていたら、友達に携帯取られた。
あぁ、私のペンギン佐久間くん…


「ちょっと、何よこのレア写真!!」


佐久間くんファンの友達が黄色い声を出すのを聞いて、ちょっと嬉しくなっちゃった。
あっ、ちなみに私はファンとかじゃないよ。ただ単に可愛いもの好きな女子中学生ね。


「いやぁ、この前偶然見ちゃってさ、可愛いよね。」
「確かに可愛いけど、何かね、イメージと違くて…びっくり」
「まぁそうだけど、私こんな彼好きだな。可愛いの好き」
「あんたが好きなのは可愛いものでしょ。
で、この写真こんなとこで普通に見てて良いの?本人にばれたらヤバくない?」
「平気でしょ。だってさ、クラス違うし、私の近くなんかに彼が来るわけ無いじゃない。」



そうそう。こんな所に来るわけ無いっての。だって、このクラスにサッカー部見事にいないし、
それに佐久間君私の名前だって知らないのよ。近くに来るわけ無いじゃない。全く心配性なんだから、私の友達は……



「はぁ、ペンギン可愛いなぁ…」
「○○もペンギン好きなのか?」
「うん。好きだよ…可愛いじゃん。」
「俺も好きだ。可愛いよな奴ら。」
「歩き方とか本当に可愛いよね…って、佐久間君!?」

なんで君が私の後ろにいるんだい?

我が友よ、目をハートにしている暇があるなら、教えてくれたって良いじゃないか。

おかげで、佐久間君の写真にニヤニヤしながら見ているのを本人にバッチし見られちまったよ。


「写真取るほどこのぬいぐるみ気に入ったのか?」
「あっうん。そうなの、この子可愛いよね、どこで買ったの?」



引きつってる。絶対今私の顔引きつってる。けど気にするな私。うまく言葉のキャッチボールは出来てたんだから。



「これは、駅前の雑貨店で買ったんだ。今日部活無いから教えてやるよ。」
「へっ、」


うぉぉい、そんなに君はペンギンが好きなのか?名前も知らないような私にお店紹介したいくらい君はペンギン君を愛しているのかい?

ちょ、それめっちゃかわいいし美味しいぞ。


「行くよね?」
「君のファンに殺されそうだから一人で探すよ。ありがとね。」


おし、これでこの危機を乗り越えられるぞ。


「拒否権はないよ。」
「なぬっ!」
「○○、これ立派な盗撮だよね?」

私の握る携帯の画面をチョイチョイと指差しながら嫌な顔で笑う彼。
だが畜生、なぜか可愛く見えちまう。可愛い顔しやがって…
取り敢えず笑ってごまかしとけ。


「えははは…」
「来るよね。」


流そうとしたら、釘をさされた。なぜ私とそんなにいきたいんだ!!
私は行きたくないです。
と言おうと思い口を開けてとじた。…なにこの冷え切った空気…。




ん?
ちょい待ち、ちょっと時間遡れ私。たしか佐久間くん私の名前呼んでないか?
たしかに呼んでたぞ何回も。なぜだ?なぜ私名前知っている!?


「てか、なんで名前知ってるの?」
「○○のことが君が好きだから。」
「そっか、だがらか…?
ねぇ、からかうのは止めようか。」


途中でとんでもないことを言われてることに気がついちゃった私は、なんとか冷静に返してみた。


「からかってなんか無いよ。本気だから。」


私の頑張った冷静を装った言葉はペイッと投げ捨てられてしまった。

そして意地悪く笑った佐久間君は、ファンや友達の目の前で私を抱きしめながら好きだともう一回言った。
そして私の顔をジィーと見てくる。ちょ、恥ずかしい!!そして女子の視線が痛い、呪われそうっ。


「ねぇ、返事は?」
「とりあえず、今日の放課後はOKです。」



悩んで焦ったあげく、とりあえず今日の事を承諾してやると、
そっちか…と、拗ねた顔をした。






(いい加減はなしてよぉ、授業始まるよぉ)
(やだ)
(畜生、助けろ友よ…)





その後しばらく私は、わおわお嘆いた後、源田くんにより救出されました。







…後書き……
源田君ごめんよ、変換ミスしてた…


20110605改


prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -