私は恋をしています。
でもね、誰にも相談できないの‥‥。だって、相談したら皆私を笑うか、異様なものを見るめで見つめるもの。 だって、私の好きな人は現実にいない‥‥絵の中の人だから。

現実の人じゃないけど、おっちょこちょいで優しくて、笑顔が可愛い‥‥あの人の事が好き。どうしようもないの。


「思い詰めて、バカみたい。」


さぁ、思い詰めたって仕方ない。明日も学校があるんだ。さっさと、寝てしまおう‥‥。




夢現の恋。




あれ?なんか鳥の囀りが聞こえる。‥‥久々に目覚ましより早く起きたのかも?それとも目覚ましセットし忘れた?

もう少し寝たいとこだけど、お母さんに怒られるのも嫌だしなぁ‥‥。

ぐいっと背伸びをして、思いっきり上半身を起こしてみると、なんとも言えない違和感が襲った。


「ここどこですか?」


私の夢なのに散らかった漫画だらけの部屋じゃない。なんだ、この殺風景な畳部屋は、私はいったいどこで何をしてるんだ?
‥‥いやいや、落ち着け私。 見慣れない空間に混乱しててもしかたない、昨日の夜を思い出してみよう。

私は確かにベッドに寝たはずよね。漫画を軽く読んだ後にふかふかの掛け布団に潜り込んでぬくぬくしながら寝たはず。なのに、今私が寝てるのは煎餅布団で上にあるのは重たい掛け布団。‥‥私、夢遊病患者にでもなったの?


「それにしても、蒸し暑い。」


喉元まで出掛けた沢山の疑問 文句とパジャマの前が切れてるの事を一旦横において、そっと辺りを見てみると、本当に何もない殺風景なお部屋にいることがわかった。そして、それ以上の情報は私の力じゃ読み取れないことがわかった‥‥むなしい。


「それにしても、冬のはずなのに蒸し暑いな。暑がりの私に嫌がらせか」


全くなんなんだ?なんとも言えないリアル感はあるけど、冬の日本がこんな蒸し暑いはずない。きっと、たちの悪い夢を見てるんだ。
はぁ、このままだと遅刻かな?遅刻なのか。遅刻しない日の方が珍しい私だけど、進級できるのかな?遅刻はきっと確定だろうけどせめて2限からは出席したいな。夢なんだろ?さっさと覚めろよ。



「まぁ思って、念じても起きるわけはないよね。こんなにリアルに感じるとかどんだけ爆睡してんだろ。てか、怖いわ。」



仕方ないが定番のあれをやるか。
本来は夢か現実かを探るのに使うけど、今回は現実に戻るため、ありったけの力を込めて右の頬をなぐった。


「‥‥血の味がする。」


結果はリアルな夢に相応しく、ツンと血の香りが鼻をつき、鈍い痛みがほほ全体を襲った。なんで、こんなむちゃくちゃ痛いのに現状は変わらないの?


「あのー?何してるんですか?」


そんな私の意識は、のんきな声でそちらに向いた。
こちらは何がなんやらお悩み中なのに、そんなのんきな声のかけ方されたら流石に苛々するわ。いったいどんな奴がいるんだ?一言文句いってやろう。


「嘘でしょ?」


喉まででかかった文句をゴクンと飲み込んで、私はのんき声の男をじっと見た。だって、まさか、ねぇ、なんで小松田君がいるの?なんで私の夢なのにカッコ悪いとこ見られるの?

「大丈夫ですか?ほっぺ痛そうですよ?」
「痛いです。殴ったら起きるかと思ったのに、夢から覚めませんでした。」





なんて、都合がいい夢なんだろう‥‥と。のんきそうな優しい顔で、忍者服をまとう青年。私の好きな漫画のキャラクター小松田君ではないか。
ぺたり。と彼の頬にてを当てて、何て現実味のあるさわり心地かと感動。やばい、こんな夢覚めたくない。覚めないでくれ。


「‥‥でも、夢なのか。」


こんなに幸せでリアルで痛くても、実際これは夢なのだ。悲しい現実だよね。いつか覚めるそんな夢に少しばかり胸が苦しい。頬が痛いのか、覚める夢が悲しいのか‥‥。ポタポタと涙が溢れて、そして頬に染みてさらに痛かった。


そんな私にビックリしたのか、小松田君は優しくて頭を撫でてくれた。もう死んでもいいと思うほど幸せを感じる私は安い女ね。ふっ。


「泣かないでください。
夢じゃないですよ〜。昨日の夜中に大きな音がしたと思ったら変な服着た貴方がろえかに転がってるんですから、皆ビックリしたんですよ。鍛練してた潮江くんが切りかかったり色々大変だったんですよ!」
「夢じゃないのか。だからこんなに頬が痛いのか‥‥えっ?」

夢じゃないと‥‥そう言うのか、えっ?
だから、パジャマ切れてたんだ。などと納得していた頭を叩き起こし、夢の中の人物が現実だと主張するそれに、なんの根拠があるのかと頭が痛くなる。


「なんで、貴方はそんなに落ち着いているんですか?」
「落ち着いていますか?
でも驚きました。まさか忍術学園に二人も未来人が来るなんて。」
「はいっ?」


もしかして‥‥ここは、絵の中でも、夢の中でもない、現実の世界?しかも、二人目ってなに?


「まぁ、色々あると思うけど、ゆっくりしていきなよ。」
「…はい。」


まったく、なにも理解できないけど、これだけは分かった。
私の愛しい人は絵ではなく現実になったのだ。



(あの、二人目って?)
(鉢屋君の彼女も未来から来たんだよ)


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