「光くんは、また補習で遅くなります。ついでに忘れたお弁当をお願いします。」


私の従兄弟、木兎光太郎は二年後期試験を見事オール赤点で通過した。
つまり彼は、大切な春休みの午前中を補習で過ごしている真っ最中なのである。


「毎回ご苦労様です。」
「赤葦君には負けるかな。毎回ご苦労かけます。」


まったくあの人は…。と、ため息をつくのは、赤葦君。


「じゃあ、私は帰るね。光くんによろしくね。」


私はいつも光くんの連絡係。
補習のこと忘れた。
携帯忘れた。
お弁当忘れた。

一年の頃は、何で私が面倒見なきゃいけないのかって、ムカついてたけど、赤葦君が入部してから心境が変わった。

学年の違う彼に会う口実ができる度に胸が踊ったし、
地味な制服でどう可愛く見せれば良いかいつも考えるようになった。

ただ、君とお話しできることが嬉しくて仕方ない。

ほんのもう少しで良いの。光くん以外のことでお話がしたいな。





奪う覚悟はできている




「おはよう、赤葦君。」
「おはようございます。○○先輩。」


長い休みにはいると、"木兎さん遅いな。"と思う朝がよくある。
その原因は至ってシンプルで、実に下らない。

そして、そんな日の朝は必ず彼女が訪れる。


「ごめんね。光くん家出るまで補習のこと忘れてて、いつも通り部活に連絡しそこなったの。あと、お弁当忘れた。」


木兎さんのことを"光くん"と呼ぶ彼女をはじめて見かけたのは、練習試合の時だったと思う。
弁当を忘れてショボくれモードになりかけた木兎さんに弁当を届けに来た彼女は、とても印象深かった。
まぁ、午後の試合で木兎さんがすごいテンションだったから…って言うのもあるけど。

会う度、見かける度に可愛らしくなっていく○○さんに惹かれながらも、木兎さんの存在が大きすぎて何となく俺は、気持ちをうやむやにしていた。


「あっ、赤葦君また背が伸びたね。」
「そうですか?」
「たまにしか会えないからかな。でも、伸びたでしょ?」
「まぁ、多少は…」
「ほら、ね。私すごいでしょ?」


こんな短い会話なのに、凄く嬉しい。木兎さん以外の話題。
それだけで、凄く嬉しい。

なのに、"もっと、話したい。"という欲求がつきない。


「あの、今度練習試合があるんです。」
「うん。知ってるよ。」
「あの、…」


"応援に来てくれますか?"

きっと、言わなくても木兎さんの応援に来るんだろう。最後の一文を言おうとしながら、俺はそんなことを考えて、言葉を飲み込んだ。
応援に来てほしい。だけど、梟谷でもなく、木兎さんでもなく、俺の応援に来て欲しいと思ってしまった。そう思ってしまったから、うまく言葉にできなくなった。

「行くよ、応援。」
「はい。木兎さん喜ぶと思います。」
「赤葦君の応援に行くよ。」
「えっ、あ…ありがとうございます。」


予想だにしなかった回答に口ごもると、彼女はおかしそうに笑った。


「応援いくから、怪我しないでね。」
「はい。」
「じゃあ、私は帰るね。光くん、よろしくね。」


バイバイと手を振りながら帰っていく○○さんを見送りながら、木兎さんに嫉妬した。結局最後に彼女が口なする名前は木兎さんなのだ…。

いつも、良いところを奪っていく木兎さん。

だけど、○○先輩だけは譲りません。奪い取る覚悟は、できています。

こっそり宣戦布告して、木兎さんのいない静かな午前練習に戻った。







(なー、赤葦。)
(何ですか、木兎さん。弁当ならさっき渡しましたよ。)
(違う、違う。○○はさ、俺の兄妹みたいなもんだからな。簡単には渡さねー。)
(はっ?)
(えっ、違うの?なんか、そういう関係(ふざけてないで、アップしてください。)





ポインセチアを君に

企画提出作品です!
赤葦君かっこいいですよね。もう、大大大好きなんです!
木兎さん入れた三角関係とかも書いてみたいところですが、今回は木兎さんと言う面倒な壁を乗り越えてヒロインを奪いにいく赤葦君を書いてみました。

ヒロインは、木兎さんを弟と思ってますが、木兎さんはヒロインを妹と思ってます。

素敵な企画に参加できて幸せ一杯です。ありがとうございました。


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