優しい顔になったね。
にっこりと笑って幼馴染みは下手くそにボールを蹴った。





 転がる。





天馬達と別れ、帰路についた俺の前に、古いサッカーボールを持った幼なじみの○○が現れた。


「久しぶりね。」


笑顔がかわいい彼女とは、もう長いこと会っていなかった。
いや、会うのが怖かった。それは、兄さんが怪我した少し後、俺は励ましてくれる○○を突き放してしまったにも関わらず、優しくしてくれた彼女の優しさが少し重たかったから。
そして、そんな拗ねた自分が嫌だったからだ。

そして、その年の終わり彼女は引っ越してしまったため、交流は途絶えた。
俺は見送りにさえいかなかった。彼女の顔を見たら、いままで散々拒絶していた癖に○○に行かないで欲しいとすがってしまいそうだったから。


「元気そうだな。」


そんな別れ方をして、
もう二度と追わないと思っていた○○が嬉しそうに俺に笑いかけ、優しい顔になったねと言う。



「何で私がここにいるのかって、思ってるでしょ?」
「‥‥。」
「あー、当てられたから黙りした。悪い癖よ?」


困ったように眉を寄せながら続けた。


「優一さんに聞いたのよ。部活終わったらこの道歩いて帰るって。」
「兄さんに?」
「そうよ。たまたま友達のお見舞いに行ったらね、優一さんに会ったの。色々話していたら、京介に会いたくなっちゃって‥‥まさか、昔みたいの優しい顔になっていると思わなかったけど、」


笑う彼女に、俺は何て返せばいいのだろう。

何年ぶりに会う?
突き放して悪かった。
見送りに行かなくて悪かった。
会いたかった。
いま暇か?

浮かんでくる言葉に、どれもしっくり来なくて迷ってしまう。
天馬なら素直に思い浮かんだことを全て吐き出すんだろうな。友人を思いだし羨ましく思う。


「ねぇ京介、サッカー教えてよ。約束したのにすっぽかしたでしょ、忘れちゃった?」


黙っていた俺にしびれを切らした彼女は、下手くそにボールを蹴って、下手でしょ?と、また笑う。


「下手だな。」
「酷いの。京介が、あの時約束破ったからいけないのよ?」
「だからって、そんね古いボール持ち出すな。」
「優一さんに借りたのー、」


懐かしいテンポの会話。
懐かしい香りに笑顔。
飾らない暖かい彼女。
止まっていたなにかが転がり出したような気がする‥‥。

夕焼けの道を俺達は肩を並べて進んだ。



(京介、沢山、沢山お話ししようね。話したいこと沢山あるのよ!)
(○○は喧しくなったな。)
(あー、酷いの。)


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bkm
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