今日も、冷えた風が肌を刺す。あぁ、春恋しい寒い朝。
一面広がる世界は白銀で、朝日に煌めいている。
そんな寒い朝、私は一人ザクザクと音を響かせながら広い校庭を歩いて行く。

「何やってんだろう、私は‥‥」

ブルッと一震えした後、右手に持った篭に目をやった。
毎朝のように水筒に温かい物をいれ、2つの湯飲みと甘い物と一緒に私は滝夜叉丸の自主練場所まで運んでいる。

困ったことに、私はなぜ毎日こんなに面倒くさい事をしているのか分からない。
だから、なんで毎日のように彼を探して暖かな飲み物と甘いものを差し入れているのかと問われれば、私は答えを持っていない。

彼と恋仲であるわけでもないし、幼馴染みでも、深い友でもない。
それどころか、皆が起きてくる頃には私と彼は他人のように接するし、話すことも有るか無いか‥‥。

そんな私がなぜ、朝早くから朝稽古の彼の元に通うのか、
彼が私の持参したものをなんの疑いも持たず口にいれるのか、
その答えはあやふやなまま、軽く一年過ぎている。
ふっ、なんたるこった。


朝の自主練を終えた自称学年一の成績は、相変わらずむかつく美しい顔を手ぬぐいで拭いている。こんな頑張るなら、学園一の自主練男に改名したらいいのに。

それにしても、

「ねぇ、滝夜叉丸。さっきから私をずっと見て楽しい?いつもみたいに自慢しないの?」


手ぬぐいの隙間から覗目がこちらを見ていることに何となく見返すと、彼はふと笑った。

「いや…、この前綾部に甘味屋を教えられてな。○○を誘おうかと思ったんだが、うまく言葉後見つからなかった。」
「あら、すべてに優秀な貴方からそんな言葉を聞く日が来るなんて、今日は槍でも降るのかしら?」
「雪なら降りそうだな。」

私の嫌みを軽く流す彼は、いつものナルシストで暑苦しい感じがしない。本当に槍でも降ってきそうだわ。

「なぁ、○○、次の休みは暇か?」


空を見上げながら、槍降ってきそうだと呟く私に、滝夜叉丸は少し自信なさそうに訪ねる。
これは、槍ですむのかしら?七松先輩でも降ってきそうだわ。


「自信の無い滝夜叉丸なんて気持ち悪いわ。
でも、せっかくのお誘いだもの、開けておきますよ。」
「そうだな、○○よ。この平滝夜叉丸の誘いを断る者などいるわけが無いな。」


はいはい。そうですね。
すっかり冷めたお茶をすすりながら、高笑いする彼を何となくウザイと思った。





 もう少しで春が来る。





(春になったら、○○に思いを告げられるだろうか‥‥。)





‥‥‥後書き‥
アスカ様のサイトのリンクを繋げさせていただきました!
ありがとうございます。

あまり書かない平君なのでちょこちょこ不穏はありますが、私の書ける精一杯のカッコいくて可愛い平君にしてみました。おきに召していただければ嬉しいです。
では!


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