あー、騒がしい、騒がしい。
クラスの窓際かやけに騒がしいのは今日が2月14日であり、その席の住人が剣城君だからであろう。
きっと当人はクールな顔しながらどうしたものかと内心焦ってんだろう。
いつもなら助けてやるけど、今日はパスだ。
はぁ、この分だと私の手の中にあるピンクの包みは、渡せずじまいになりそうだな…。
騒がしい音
「不機嫌そうだな。」
「そりゃどうも。」
ホームルーム終了のチャイムが鳴った後、大きな紙袋を持った剣城が私にそう話しかけてきた。私は、渡せずじまいの袋を鞄の奥に置き去りにしていることを思い出したけど、この量を消費する剣城に甘いものを追加してやるほど鬼畜じゃないから、家に帰って自分で消費しようと思った。
「それ、部室のロッカーに入るの?」
「……入らないだろうな。」
「霧野先輩に神童先輩、他色々で部室チョコの山ありそう。」
「気になるなら見に来るか?」
「えー、やだ。」
めんどくさいもん。と、続けながら、実はあんたがチョコ持ってるの見たくないからってのが本音だけどね。とか思ってみる。
「なぁ、」
「なーに?」
「俺、まだ○○からもらってない」
「はっ?」
「あるんだろ?」
確信めいて手を出す剣城に腹がたつ一方、かっこいいと思ってしまった。
(ありがたく受けとれ、)
(大切に食べる)
私の心臓の音は、朝の女子に負けないくらい騒がしかった。