この頃、考えるんだ。曇りガラスの向こう側や、障子紙の向こうの世界の事を。
本来なら見えないはずの向こうの世界には、いったい何があるんだろうか。
子どもの頃、大人の世界が気になって仕方なかったように、今の俺は無償にその世界の事を知りたいと願った。
前なら、ここまで深く考えなかったのにな…。それもこれも、夏目の見る世界と同じものを見ることができる的場さんや名取さんが俺の前に出てきたからだ。多軌みたいな夏目を理解できる女子がいるから、俺は夏目のそばにいることに不安を覚える。
だってそうだろ?
ぼんやりとしか見えなくても、夏目と同じ世界に触れられていたおれは、特別だと思ってた。だけど、あのふたりは、夏目と同じものを見て笑い、悲しむことができるとわかったら、俺の存在はちっぽけなものだ。
それに、たきだ。たたきは可愛らしい。夏目だって女子と付き合う方がいいだろう。
君は俺を選んでくれる?
道立平行場の僕ら
不安だ。
田沼はモテる。俺みたいにモヤシじゃないし、優しいし気が利くし…
裏で結構女子に人気があるんだ。
さっきも女子が、「田沼君がね…」と話していたし、
はぁ、やっぱり田沼には俺なんかよりああいう子の方が似合う。多軌と話すときとか楽しそうだし…やっぱり俺なんかといるのは良くない。危ない目に遭わせたりするし、あの時だって…名取んと知り合って……名取さんとか危ないし…。
あぁ、不安要素しかない。
俺、どうしよう。田沼とずっといれるか?
((あるのならば、永遠に。君と歩みたい…))