「えっ…?」
静雄の質問に私は答えられなかった。
しばらくして仕事に向かう静雄と別れて、自室に戻った私は、先程の質問の意味を考えた。
私は、自分がこっちに来た目的を果たした。
もういつでも母国に戻れる。
何にも恐れず堂々と。
仕事復帰に向けて色々準備しようとまで考えていた。
だけど、
「私、日本から離れること考えてなかった…」
恋しくて、帰りたくて仕方なかった母国。
なのに今じゃ、夏祭りとか、遠出とか、色々なことをしたいなと考えてる自分がいる。
「私………どうしたいのかな?」
仕事がしたい。誇りをもって取り組んでいた大好きな仕事。
危険は付き物だったけど、遣り甲斐は他のどんな仕事よりもあった。
でも、ここから離れたくない。
気持ち悪いほどの人口密度。
不思議な存在感を出すバイト先でもある露西亜寿司。
町を歩けば見かける知り合いの顔。
来良学園に、その生徒。
オタクと保護者。
ウザい情報屋と美人助手。
首無しライダーと闇医者。
ジャパニーズマフィア。
取り立て組。
風通りの良い壁に空いた大穴も気に入ってきたし…
それに静雄…………。
私は、いつのまにか居心地が良くなっていた。
この、日本の池袋と言う町に、居場所を作っていた。点と点を繋ぐ危うい居場所じゃなくて、
いつのまにか繋がってる、本当の居場所。
「ボスとしか築けないと思ってたのに…いつのまにか作っちゃってたんだ…」
少年…ううん、Aの資料を請求するメールを送った後、私は携帯電話を取った。
「あっ、もしもしボス?」
後もう少し、ここに居させてもらおう。
温かい…新しい居場所に。