「ねぇ…」


私は、はじめて少年に詳しい話を聞いた。

鬼ごっこの事、それを教えてくれた母親の事。
母親は、死んだこと。
彼は、顔に似ていた私と母親を重ねていたこと。
寂しかったこと。
私と同じで、居場所を求めていたこと。


「鬼ごっこしたときだけお母様、僕と向き合ってくれた。だから、」
「私もそうしてくれると思った…」
「うん。」


純粋なために信じた嘘…信じるしかなかった嘘。少年が求めていた母親は、そうしなければ振り向いてくれなかった。だからこそ、ずっと母親を探していた。いないと知っていても。
だから、私が彼を見つけ出したとき彼は、嬉しかったのだ。

ここまで私を追ってきてしまうほどに。


「私、怖かったの…貴方が私の前にやって来たとき。昔の私が目の前にいるみたいで。だけど、周りに甘えるばっかりで、私は何にもしていなかった。」


怖かった。
昔の私が帰ってきたみたいで…

怖かった…
怖かった、怖かった。でも、一番怖かったのは、


「怖かったんだ、寂しかったんだ。昔体験した心寂しさが戻ってくるみたいで…忘れたと思ってたから。」

だから、私は底知れぬ恐怖に陥った。


「私は、私から逃げてまた貴方を傷つけたのね。」
「…………」
「だから私思うの…仲直りしよう。
そうだ、夕食食べよう?」





自分でもどうしたいのかわからなかったけど、ただ頭に浮かんだことを言ってみた。

そうしたら、

差し出した手に温かさが移ってきた。



あぁ、嬉しい。





「食べる」







少年と、昔の私と、仲直りできるかな?




くだらない恐怖に怯えた昔の私と、お別れ。






♂♀


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bkm
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