この日、二つの心が死んだ。冬の終わりのことであった。


 赤司 征十朗は見ていた。一メートル手前で揺れる、スカートのひだの不安定な軽やかさを見ていた。

 相田 リコは、普段彼に向ける仏頂面をすこしもにこやかなものに変えようとせず、ジロリとこちらに振り返った。

 赤司は背中を突っつかれたようなザワザワする悪寒を感じながら足を止めた。初春というには肌寒い、目の眩むような曇りの日だった。

 リコは二歩で赤司との距離を詰めると、微動だにしない彼の唇にキスをした。レモンの味も、燃える熱もない、ガラスに口付けたような味気ないキスだった。そのしっとりとした柔らかさだけが本物だった。

 彼女が爪先立ちから地面にペタリと足を付けるのを待って、赤司は手の甲で唇をゴシゴシとこすった。

「なんのつもりですか」

 リコは表情を変えぬまま、

「少し、困らせたくて」と言った。



 この日、二つの心が死んだ。それは、思慕になりきれなかった淡い期待感だった。慈しみ、育み、大切に守ってやれば芽を出したに違いない、愛の種だった。すれ違う一瞬に重なる逢瀬だった。冷えた言葉の裏側にある焦がれだった。後ろ髪を引かれる拒絶だった。

 始まることのない、恋だった。


「私たちの間に恋は生まれないけれど、この胸に巣くう痛みは本物だから、あなたにも少しくらい困ってほしかったの」

 そう言って、リコはわずかに微笑んだ。





始まりの無い世界で 表情を変えずに 私はあなたに 「少し、困らせたくて」と言いました。



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Twitterの診断にたぎりまくった結果。
敵対し、なじり合い、認めることのできないその裏側で、たぶん愛していたはずの二人。思春期なのに捨てるしかなかった淡い初恋。赤司もリコも、この離別に涙を流すことはきっと一生ない。
「育てることも相容れることもできない思いなら捨ててしまいましょう」

うちの赤リコ利己的すぎて困る。あと赤司さん全然喋ってなかった。
他にもたくさんツボな結果出たから書きたいです。




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