まるで魂への呼びかけのように、子守歌という名の賛美歌が、夕暮れの教会を柔らかく満たす。西日を受けるステンドグラスは、えもいわれぬ美しさだ。イエス・キリストを抱いた聖母マリアが我が子に向ける微笑を浮かべ、桃井 さつきは歌っていた。自身の膝で微睡みの渦中にいる、紫原に向けて。

 彼には聴いたことのない歌だった。しかし、それはのびやかに、けれど囁くように甘く、優しく、聞く者をどっぷりとした安心感の中へ誘う。夢の淵で見た理想郷のような、信じられないくらい不確かで甘美な眠気の訪れ。

 桃井の細い指が紫原の髪を梳く。幼い頃、母や幼稚園の先生が眠る前にしてくれたのと同じように。どこまでも、気持ちいい。

 斜陽は少しずつ、ステンドグラスに当たる面積を減らしていく。傾いていく。聖母マリアは、変わらず愛しい息子に慈しみの目を向けている。彼らも眠りについていくのだ。

 赤い絨毯の敷かれた、高い天井を持つ静謐な教会。まるで女神のような同級生の膝で、紫原はあたたかさを感じながら目を閉じた。




▽謎シチュ。




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