※ちょっと注意



 『忠実な下僕』というのは、口では簡単に言えても、実際にその表現に恥じない者になるのは、かなり難しいことだろう。雀ヶ森 レンはそう考える。

「あっ、レン様っ……」

 衣服もほとんど脱がさない下半身だけの獣じみた行為でも、彼女はきちんと濡れる。それが自分に対する好意か敬意か、それとも女体の自衛本能か、レンにはわからない。彼はあまり、ファイト以外のことを小難しく思案しない。面倒くさいからだ。

「アーちゃんっ……」

 それでも、健康的な年頃の健康的な肉体は、ある意味まっとうに機能し、レンは鳴海 アサカの中で限界を迎えた。引き抜こうとする動作を、アサカが抱きついて止めた。

「アーちゃん、だめっ……」

 かすれた声で訴えても、アサカはいやいやというふうに首を振った。

「出してレン様。レン様の証を、私にください」

 潤んだ瞳の懇願が、レンの琴線に触れた最たる要因ではない。アサカの言葉がレンの射精に拍車をかけたことは言うまでもないが、ただたんに限界だったのだ。こういう時、男は目の前の餌ばかりに食いついてしまう。欲と快感で、正しくものが考えられなくなるのだ。中で出したいのは、男としてはありふれた心理だった。

 アサカの体を強く抱きしめる。彼女の誘惑に釣られた証拠だ。瞬間、背中から自分の魂のようなものが出ていく感覚が彼を襲った。体と脳の波長がずれ、思考していないのに体は動く。熱いなぁと、それだけが頭に浮かんだ。

 欲を彼女の中に出しきると、ひどい脱力感にみまわれた。ぼんやりと床に転がるレンをよそに、アサカはちゃくちゃくと衣服を身に付けていく。――といっても、初めからショーツを脱がせたくらいだ。上半身はボタンがいつもより一、二個多くはずれている程度。胸はほとんど触っていない。レンはアサカの細い首は好きだったので、首筋にはいくつか赤い花が咲いていた。

「アーちゃんは、僕の子どもができたらどうするんですか?」

「レン様にご迷惑をおかけするようなことはありませんよ」

 情事後とは思えぬキリッとした表情で、アサカは微笑んだ。

 アサカはレンを崇拝している。そして、彼の言うことには絶対に忠実だ。煩わしいコンドームや膣外射精などしなくていいと、こんな時ですら彼の面倒を取り払う。そのわりに、レンの子を身ごもりたいだとか、そういった女らしい鬱陶しさは持ち合わせていないのだ。その証拠に、レンはアサカがこの歳で経口避妊薬、いわばピルを服用しているのを知っている。アサカも特別隠しているわけではないし、だからこそ「大丈夫ですよ、避妊なんかしなくても」と誘うのかもしれない。

 レンも一応、避妊は男の義務だ、くらいには思う。彼女が望むならしてもいいのだけど、「かまいませんよ」と言うからしない。レンはシンプルだ。だが、もやっとしたものが胸につっかえることはある。どうもアサカの態度からは「上司に言われるから応じている」ような雰囲気しか感じれないのだ。レンのことが愛おしくて、体だけでいいから繋がっていたいというような、そんな気配は感じられないのだ。あるのは無限にも思える受理、それだけ。アサカがレンに求めることはない。

 ――もやっとするなぁ。

 レンは思う。思う理由は知らない。彼はファイトのこと以外は、わりと無知で純朴だ。しかし、アサカは違うのだろう。彼女は盲目にレンを慕いながらも、その聡明な目つきで、彼の考えもつかない奥深くまでを見渡しているのだろう。なんて、大変なことだ。

「アーちゃんは、ずるいですね」

 「それは申し訳ありません」と困ったように眉を寄せるアサカの心中は、やはり読めない。




―――――――――――――



たんにレン様がアホなだけの話になりました…。素のレン様はなんもかんもお見通しなのか、なんにも興味ないだけなのか。見通してそうですけどね…たぶんどっちもでしょうね。そこまで深く考えてないだけなんじゃないですかね…。
アサカちゃんはレン様慕いまくってるけど、感情的にはいろいろ混ざってるようなイメージがあります。

(`-"ロ-)…って、全部イメージじゃねぇか!お前の勝手なイメージを俺に押し付けるな!
(('ロ';))ひーっ!ごめんなさい!




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