誕生日プレゼント買いに来ただけなのにな…。

※「TRUTH」の管理人様・終夜那知さんから戴いた「この人とんでもないな…」の続きを管理人のくろこが書いたものです。






私は先日、ギアステーション所長のツヅリさんから戴いた能力値パーフェクトなイーブイを抱えてあちこちのショップを歩き回っていた。



実は、明日誕生日のノボリさん・クダリさんに渡すプレゼントを買いにきたのだ。



どうせ渡すのなら直前まで秘密にして誕生日を祝いたいもの。
同棲しているのでプレゼントがバレる危険性を考慮して、こんな直前に買いに来ることになってしまった。



しかしなかなかプレゼントは決まらない。



ぶっちゃけノボリさんもクダリさんも何を貰えば喜ぶのかわからないのだ。



かなりの自惚れではあるものの、なにをプレゼントしても喜んでくれるとは思う。
多分ニボシを渡しても喜んでくれる。



しかし、私がプレゼントするから喜んでくれるのではなく、好みのものだからこそ喜んでほしいのだ。
ていうかニボシを握り締めて喜ぶノボリさんなんて見たくない…。


そんなこともあり同じようなお店を行ったり来たりしていると、腕の中のイーブイも飽きて小さいあくびをした。




「ごめんね。早くプレゼント決めちゃうから。」




そう声をかければイーブイが私を見上げて、気遣うように小さく鳴いた。
…のだが、次の瞬間にはイーブイが手足をバタつかせ始めた。



行儀の良いこのこが暴れだすなど珍しく、驚いているとイーブイは私の腕の中から抜け出し走り出してしまう。




「え!?イーブイ!?何処行くの!」




気遣うように見えたのは私の錯覚か!?



もしかしたらあの鳴き声は「てめぇには愛想尽きた。やれやれだぜ。」の意だったのかもしれない。
大変だ、このままではイーブイに見捨てられてしまう…!




「私を捨てないでぇー!」




ポケモンから別れを切り出されるトレーナーなんて私が初めてではないだろうか。
半泣きで私も走り出すと、イーブイが見知らぬ誰かの足に背後から突撃をかました。




「おぉ?」




私もびっくりだがその男性もそれ以上に驚き、振り返る。



その男性は…なんと、イーブイを私にくれた2代目所長・その人であった。




「ツヅリさん?」



「あ、なまえちゃん。」




足に押し付けるように頭をこすり付けているイーブイを抱っこすると、ツヅリさんが私の存在に気付き声をかけてくれた。
私とツヅリさんが会うのはこれが二度目だ。



ツヅリさんは最初身分を明かさなかったので、私は知らずこの2代目所長とタッグを組んでダブルに挑戦してしまった。
人が悪いなぁと思いつつ、最初に身分を明かされていたらとてもじゃないけど緊張してしまって私はバトルに集中できなかっただろう。




「イーブイとお買い物?」



「あ、はい。ノボリさんとクダリさんの誕生日プレゼントを買いに…。」



「あぁ、そういえば明日だっけ。俺もプレゼント買わなきゃなー…。」




「でも俺はもっぱら貰うほうが好きだ。」と言ってツヅリさんはイーブイを撫でる。
我が道を行くツヅリさんは今日も通常運転のようだ。




「ツヅリさんはもしかして今、休み時間ですか?」



「サボ…うぅうんん、今日休みなんだ。」




休日と言うわりにツヅリさんは制服姿だ。
だからてっきり今日は仕事が入っているのだと思ったんだけど…。




「…休日も制服着てるんですか?」



「うんそう。」




そんなバカな。
ツヅリさんとはこれが2度目の顔合わせなんだけど、ノボリさんやクダリさんに限らず有名なこの人の噂は私の耳にも入っている。
史上最強のポケモンバトルの腕前を持つと同時に…最凶のサボリ魔である、と。



このいでたちからしていかにも仕事を抜け出してきました、という感じだ。
…これはもしや、ノボリさんに連絡すべきじゃあ…。




「本当ですか…?」




表情を曇らせた私に危険を察知したのだろう、ツヅリさんが”ゲェ!”という顔をして「なまえちゃん、誕生日プレゼントは決まったの?」と早口にそう告げた。




「それが、何を買えばいいのか困ってて…。」




するとツヅリさんがニヤリと笑みを浮かべた。
まるで突破口を見つけたと言わんばかりの笑みだ。




「この前、クダリがアイスワイン欲しいとか言ってたなぁ。」



「…え!ほんとですか!?」




話に食いつく私を横目にツヅリさんが笑った。




「ノボリはなんだったかなぁ?お店見て回れば思い出すかも。」



「ツヅリさん!…良ければお店、一緒に回りませんか…?」




あぁ、私…見事に釣り上げられている。



しかし、ツヅリさんの見せる釣り針のエサに気付いたからこそ彼の望む言葉が私の口から出てきたわけで。
さらに、本気でノボリさんに連絡入れる気がなかったこともあり、たいして考える時間もなく私はツヅリさんを誘った。



もちろんツヅリさんは「いいよー。」と笑顔で言ってくれた。







今日も今日とて絶賛サボタージュ中の2代目所長を探すサブウェイマスター・ノボリとクダリ。
実はクダリもツヅリと一緒になってサボっていたため、ノボリから逃げ回っていたのだがついさっき捕まってしまったのだ。




「もっと早く歩けないのですか、クダリ。」




先を歩く兄のノボリが背後のクダリに怒る。
ノボリが怒るように、クダリは腰をさすりながらひょこひょこ歩いていた。




「だって…ノボリが背後から僕の腰めがけてダイビングキャッチしてくるから痛いんだもん。」



「それを自業自得と言うのですよ。まったく…サブウェイマスターが二人も不在だなんて。」



「僕、先に帰ってようか?」



「いけません。どうせ真っ直ぐギアステーションに戻らず寄り道するでしょう。わたくしの近くにいて下さいまし。」



「じゃあ文句言わないでよ。」



「これが言わないでいられますか!どうしてあなたとツヅリさんはいつも結託してサボるんですか!その度に取り残された駅員たちが…」



「…だから業務に響かないよう平日の昼間に決行してるのに…。」



「なんですって!?」



「別にー?」




ノボリの説教を流し聞きしながら雑踏を見るクダリに、見覚えのある二つの人影が目に入る。
長くなりそうなノボリの説教を遮るようにしてクダリが「あ!」と声を上げた




「なまえと男が並んで歩いてる。」




”なまえ”の単語に異常な反応速度で気付いたノボリが「なんですってぇぇえ!?」と叫んだ。




「ナンパ!?いやまさかの間男!?くっ…あのときの102号室の男か…!
…て、ツヅリさんじゃないですか。どこの間男かと思いましたよまったく。」



「…102号室の男となにがあったの?」




悪意を持ってツヅリを敢えてただの”男”と称したクダリも、正直色々な点でひいた。







暫く歩いてアイスワインを購入した私はツヅリさんに「ノボリさんは何か言ってました?」と聞いてみた。




「んー…なんかニボシ買わなきゃとか言ってたよ。」



「それは日常的な食料品の買出しなんじゃぁ…。」




もうほんとにニボシ買ってきてやろうか。




「どうしよう、ノボリさんの誕生日プレゼ…」




と言い掛けたとき。
突然ツヅリさんが私の口を押さえた。



え、私もしかして口臭ひどかったのかな!?



女として終わってる自分に衝撃を受けていると、ツヅリさんが背後を振り返った。




「いるんだろ?二人とも。」



「…え?」




すると出てきたのは気まずげなノボリさんに、いつも通り笑っているクダリさんの白黒二人組み。



いったいいつからくっ付いて来たのだろう。
ツヅリさんとの会話から誕生日プレゼントを買いにきたことがバレたのでは、と私は青ざめた。
だからツヅリさんは私のプレゼント発言を阻止しようとしたのだ。



…しかしあのノボリさんの気まずそうな顔からしてばっちり聞かれたことだろう。




「ノボリさん…もしかして、話聞いてました…?」



「その、申し訳ありませんなまえ様、」




するとクダリさんが「ノボリ、なまえが浮気してるんじゃないかって疑ってた!」と突然そんなことを言い出した。




「クダリィィィィィィイ!!それは最初だけで相手がツヅリさんと判明した時点で疑いは晴れたじゃないですか!!」



「へー、疑われてたんだ。」




…どうやら私は浮気を疑われていたらしい…。
せっかく恋人の誕生日プレゼントを買いにきたというのに浮気を疑われ、私は少し冷めた目でノボリさんを見た。



そんな私の視線に「いえ、その、違うんです!」と珍しく歯切れ悪く言うノボリさんと私の間に、人影が割って入った。




「ここは俺に任せて先へ行くんだ、なまえちゃん!」



「…はい?」




ツヅリさんだ。
彼はそう言うやいなや、モンスターボールを構えた。




「ど、どうしたんですか急に!?」




慌てる私にツヅリさんは小声で「今のうちにノボリの誕生日プレゼントを買うんだ!」と言う。
気遣ってくれてるらしい。
突然の臨戦態勢に私以外の二人は驚き、ノボリさんが「どういうつもりですかツヅリさん!」と叫ぶ。




「どういうって…空気読んでよノボリ。バトルしようって言ってんの!」



「…いや、ツヅリさん相手ではわたくし達にはどうしようも…。」



「なまえー僕お腹すいた。あっちでクレープ食べようよー。」



「空気読みましょうよクダリさん。」




私の肩を掴んでクレープ屋に連れて行こうとするクダリさん。
マイペースすぎる。



「いいじゃん、込み入った話してるみたいだしさ。」と言うクダリさんの目の前に、シャンデラとハピナスが躍り出て進行方向を防いだ。




「クダリ!それはわたくしの役目です!!」



「クダリィ…俺ムシするとか、大きく出たもんだねぇ。早く構えなよ。」




ノボリさんのシャンデラにツヅリさんのハピナスだった。
クレープを阻止されたクダリさんが不満げに片頬をふくらませる。




「えー、だってツヅリ、勝たせてくれないじゃん。」




そう言いつつもモンスターボールを持ち、二人に向かうクダリさん。
チリチリと肌を焼くような緊張感が辺りに伝わる。



すっかりその緊張感に当てられ、細い声で「ひぇぇ〜」と言う私に、ツヅリさんが口火を切って叫んだ。




「なまえちゃん、今は走って逃げてくれ!すぐに追いつくから!」



「え!」



「なまえ様!この戦いが終わったらお話したいことがございます…暫しお待ちくださいまし!」



「えぇ!?」



「なまえ、これが終わったら僕と結婚しよう!」



「えぇー!…っておぃ!?」




なにこのフラグ乱立のオンパレード!!
全員死亡フラグ立ててるんだけど!?
ていうか1名どさくさに紛れて何言ってやがる!!



これは止めるべきだろうか。
しかし各々モンスターボールを構え、並々ならぬ闘志をみなぎらせる3人を見て、私はこの戦いが避けられそうにないことを悟った。




「えっと、えっと、う…、う〜ん……あ、後は任せた!絶対に死ぬなよー!」




とりあえず私もそれっぽいことを言って、背後を振り返らず走り出した…。
…もう少し可愛らしいセリフをチョイスすべきだったな。



私の最後のセリフにより、3人のフラグがほぼ確立してしまったと後から私は気付くのであった。






11.8.28
終夜さんからのリクエスト「ツヅリさんとのお出かけ&それにくっ付いて来るサブマス」でした。
コラボ小説なんて書くの初めてですごく緊張しました!
しかし勝手にツヅリさんに死亡フラグ立ててすみません^^;
だいぶツヅリさんに対する私の理想が反映しており、誰だこれはの状態です。
口調とか合ってますでしょうか…?
こんなので良ければ貰って下さい終夜さん。


あと、アイスワインはワインをかけたアイスではなく、ワインの種類です。
甘いお酒がお好きな方にお勧めです。


ノボリさんの誕生日プレゼントは…にぼしを買うかどうかは皆さんにお任せします(笑)


102号室の人はただの親切なお兄さんです。
つまりノボリさんが勝手に警戒してるというだけのことです…なんという妄想力。




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