こくはく。
「今日はさんきゅーな。昨日の今日だから顔見たら避けられると思ってたわ。
ちゃんと話聞いてもらえて助かった…。」
「ううん。…でも、ナルトは顔出しに来ないんだね。」
私のバカ。むしろシカマル一人のほうが嬉しいでしょうが!
…なんて思えるほど今の私はゆとりがない。
「姫を傷つけた俺がヘラヘラして会いにいけるわけがないってさ。」
「…そっか。いや…まだケンカしたままだったからさ。早いとこ謝らなきゃと思って…。」
嘘、本当は安心してる。今ナルトに会ったら私きっと逃げるもの。
何よ傷つけたって…。仲間を騙して心も痛まない人がそんな風に思うわけないでしょ。
「そうだったな。…早く仲直りできるといいな。」
そう言って私の頭を2,3度撫でてからシカマルの手が離れる。
「じゃあそろそろ「ねぇ、シカマル。」
「何だ?」
…やっぱり、諦めるなんて出来ない。
「今私の目の前にいるシカマルは演技?…それともー―…。」
どんなシカマルだって私は好きだ。何度自問自答しても結局はこの答えにたどり着く。
だって…6年も彼に恋してきたのだ。
簡単に諦められるわけがない。
「…どっちだろうな。」
暗部だろうと…嘘をついて皆を騙していようと――…
それは私がシカマルを嫌いになる理由にはならない。
「……好き、」
「…は?」
だから 伝える。
「シカマルが好き。…友達とか仲間としてじゃなく…恋愛感情の好き。」
だから、どうか私を嫌いだなんて言わないで…。
*
「綱手、俺とシカマルが暗部だって事、姫にばらした。」
「…!?何でそんな勝手な真似をしたっ!」
「別に?ただあいつの能力が予想外に高かっただけだ。」
一応事の次第を伝えておかないと後々面倒なことになると思い伝えに来たが……
案の定、だな。
俺ら2人が暗部だってことは色々な事情で秘密だからな…。
しかもその上俺は総隊長。暗部のトップが一判断で部外者に勝手に自分の正体晒したんだ。
火影でなくても怒るよな、普通。
「お前なら記憶操作なりごまかすなり…どうとでもできるだろうっ!」
「あいつは仲間を裏切ったりしない。…それに今日もう一度シカマルが話に言ってる。
駆け引きであいつの右に出る奴はいないよ。」
フ……
これ以上いても綱手の煩い小言を聞くだけだと判断した俺は言いたい事を言ってさっさと後にする。
「待てっ!…ったく、相変わらず逃げ足の速い奴だ。
姫、か。あいつが自分の正体をあぁも簡単に晒せる相手……。
少しばかり詳しく調べているか。」
*
「……姫の気持ちは嬉しいけど、俺はそれに応えることはできねぇ。」
……分かっていた。秘密を知られてしまったとか、そんな理由ではなく……
別の理由でフラれるだろうことくらい。
「好きな人がいるんだよね…。」
「……っ、あぁ。」
「知ってたから良いよ。そんな顔しないで?元々玉砕覚悟で告ったんだし!
…あ、負け惜しみとかじゃないからね?
……私、決めてたんだ。"自分にしか出来ないことを見つけられたらシカマルに告白する"って。」
…何強がってるんだろ。
負け惜しみじゃないから、って……完全に負け惜しみじゃない。
好きな人がいるの分かってても私に魅力があればシカマルは私に振り向いてくれる…。
本当…バカみたい。
「ありがとな、俺なんかを好きになってくれて。
俺の気持ちに気付いていながらも自分の気持ち伝えてくれて……すげーと思う。
そんなすげー姫に、俺なんかはにあわねぇよ。」
そんなこと言わないでよ。こっちは何年片思いしてたと思ってるのよ。
…下手な慰めなんて余計惨めになるだけ…。
私はこの6年……ずっとシカマルしか見てなかったんだから。
「…だよねっ、うん!シカマルよりいい人なんていっぱいいるもんね!
いつかびっくりするぐらい美人になってフったこと後悔させてやるんだからね!
……じゃあ病院戻るわ。またね。」
そう言って勢いよくブランコから飛び出して私は病院へとかけていった。
…もちろん、痛む足をかばいながら…ゆっくりと、でも早く。
シカマルの返事なんて聞きもしないで。
私は……フラれたのだ。
6年もの片想いは"お前の気持ちには応えられねぇ"の一言で終わったのだ。
あぁ、フラれることなんて分かっていたのに……
今はこのまま消えてなくなりたい気分だ。
.