#2







「……私達は、いつから此処に…?……」




青い光を反射した窓が淡く煌めいて。
先ほどまでの記憶が途切れた状態では、この場所がどこかもわからないままでした。



わかることは、これが病院のとある一室だということ。
清潔そうなシーツと掛け布団が5、6台のベッドに丁寧に敷かれています。



私はゆっくり自分が寝ていたベッドに座り、手首に伸びるチューブを見つめました。




何か自分は事故にでも合ってしまったのでしょうか。



そうでないなら何故このような所にいるのでしょうか。




何も知らない、見覚えの無い病院は
とてもひどく孤独に思えました。




私と弟の二人きりの病室も、より寂しさを増すばかりで。



無論手持ちのポケモンはここには居ません。
かれこれ生まれてから入院というものを味わった記憶は無いのですが、ポケモンはおろかモンスターボールさえも手元には置かせて貰えないようです。





窓の外には居ないだろうかと覗きたくなりました。
誰かが面倒をみてくれているのではと。

しかし、窓は縦長に細く、またやたらと高い位置に設置されておりました。










静けさに耐えられなくなり、
何か言葉が欲しくなりました。






「…クダリは、此処がどこか知っていらっしゃいますか…?…………」








「………………………………」





弟は答えませんでした。

ただ黙々とオルゴールの接合部を外していくだけでした。
白い箱は更に形を失っていきます。



私は1つ軽いため息をつきました。


焦っても良いはずなのに、どこか落ち着いてしまうのは
目の前に弟が居てくれたせいでしょうか。



自分達が寝ていたベッドの周りは別の誰かが使っているような形跡はありませんでした。


私達以外に患者さんは居られないのでしょうか。

表の様子を見に行きたくなりました。






手元の点滴の持ち手を掴み、足元のスリッパを鳴らして病室の引き戸に向かいます。



冷たい取っ手を握りしめ、左に引けば意図も簡単に扉はその口を開きました。




「……クダリは此処にいてくださいね…」





一言だけ。


先ほどと同じように弟は頷く動作も見せないままでした。
私は前を向き、廊下に足を踏み入れました。


床の扉の縁に点滴台は引っ掛かり
カラカラと乾いた音を出しました。










閑散としているのは、時間帯のせいでしょうか。


イヤ違います。生き物の声がしないのです。
病室の窓では聞こえないと思っていたのですが、廊下に順序よく列べられた大きな窓ガラスの外からでさえもその生命の鳴き声を耳にすることは不可能でした。




本当に此処は何処なんだ?




歩くと聞こえるのは自身のはいてるスリッパの音と
点滴台を引き摺る滑車音だけでした。










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