お祝いの裏
麗華誘拐の当日の夜。
「兄貴、なんで麗華を殺さなかったんですかい?」
「…気が変わったんだよ。」
麗華が寝静まったころ、ジンとウォッカは二人で酒を飲んでいた。
「でも兄貴が取引の現場を見られといて殺さないなんて………もしかして」
「あ゛?」
「いや…なんでもありやせん。」
「言いたい事があるなら言え。」
どうする…
言うべきか?
でも、言うと兄貴に殺されそうだし…
かといって、言わなけりゃ「ほう。いっちょ前に俺に隠し事か?」とか言われて殺されそうだし…
………どのみち殺される
「いや…もしかして兄貴、麗華の事好きなのかなぁ。なんて…あ、ありえないっすよね!あは、あはは…」
誤魔化せ!
誤魔化すんだ、俺!
「………」
………??
何も言ってこない?
「………」
………
なんだこの空気っ!
どうしたらいいんだよι!
「ウォッカ。」
やっとジンが口を開いた。
「はいぃいっ!ι」
ビックリして声が裏返ったウォッカは、額から大粒の汗をだらだら流してる。
「女に何か渡すなら、何がいい?」
…………………………………………へ?
「ぷ…プレゼントですかい?ι」
「…あぁ。」
これは遠回しに
「その通りだ。」って言っているようなものか?
まったく、兄貴も素直じゃありやせんなぁ
( ̄▽ ̄)
「あ゛?何て言ったウォッカ?」
「え゛!?い、いや何にも…!」
(`△´;)
なんで俺の心の声が聞こえたんすか…!?
エスパーですかい!?
「そ、そうっすね…。可愛い物とかがいいんじゃないすか?」
「可愛い物?」
「ほら、ケータイのストラップとかラメ入りの髪留めとか。」
「やけに詳しいな、お前。」
ふっ。
彼女がいたらこんなの買ってあげたいなとか思って女の子グッズショップを覗いてるなんて…
死んでもいえやせんぜ。
「それじゃなかったら、一緒に商店街に行ってみたらどうっすか?」
「一緒にか…」
兄貴…
真面目に考えてる…
「…明日、商店街に行ってくる。」
「へ、へい!楽しんできてくだせぇ!」
そう言って兄貴は自分の部屋に戻っていった。
…頑張れ!兄貴!
部屋に戻ると、麗華が布団にくるまって寝ていた。
…かなわねぇな。
麗華を殺さなかった理由…
もちろん一目惚れもある
だが、何より…
こいつがいなきゃ、俺が破滅しそうだった。
こいつが…麗華がいて、今の俺は幸せに感じた。
…俺らしくねぇな。
一目惚れなんて。
愛しい麗華の髪を撫でて、横になりまぶたを閉じた。
つづく
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