ウォッカ、家出する

 



「もう兄貴なんか知らないっすから!!」

「上等だ!!そこまで言うなら出ていけ!!」

ほんの小さな事が原因で始まったこのケンカ。

ウォッカとジンがケンカしているところを初めて見た私は

すごくビックリして、戸惑った。

「言われなくてもでていきやすよ!!」

「ちょ…ウォッカ!!」


私は呼び止めようとしたが、ウォッカは
バタンと勢いよく、扉から出て行ってしまった。


「も〜。いいの?ジン。」

「放っておけ。」









ガシャン!!

「あぁ〜!!これ塩だよ!!」

「知るか!つか、そっち焦げてるぞ。」

「本当だ!!火、止めなきゃ!!」

私たちは、晩ご飯を作るのに苦労した。

とうとう出来上がった物は、訳の分からない
料理とは呼べない物体だった。

「………ジン、食べなよ。」

「俺を殺す気か。」

はぁ〜っと私達はため息をついた。

ウォッカがいないだけで、こんなに生活が乱れるとは……


居なくなってからウォッカの大切さを知った私は、ジンに言った。


「ウォッカを探しに行こうよ。」

「………。」

頑固だなぁ。

ジンは何も言わなかったが
「ここでウォッカを探しに行ったら、俺が負けた事になる。」
と思っているのが、言わずともわかった。

「寝る。」

いきなりそう言うと、ジンはベッドへ潜り込んだ。

まるで子供だと思いつつ、私も寝る事にした。








翌朝。

私はいい香りで目が覚めた。

これは…ベーコンの匂い。

私は、眠い目をこすり
キッチンへと向かった。

キッチンへ着いたとたん、ジンが私の後にキッチンへ来た。


ん?
じゃぁ、ベーコンを焼いているのは……


「おはようございやす。」

「ウォッカ!!」

キッチンでエプロンを身に付け、馴れた手つきで料理をしているウォッカ。

フライパンからは、美味しそうなベーコンと目玉焼きが
顔をのぞかせている。

「帰ってきてくれたんだね!」

「2人の事だから、ろくに晩ご飯も作れなかったろうと思ってな。」

「えへへ…」

図星を突かれ、私は照れくさく笑った。

「…腹へった。早く作れ。」

さっきまで無言だったジンがやっと口を開いた。

「へい、兄貴。」


よかった…

ウォッカが帰ってきて
本当によかった。


私とジンは、腹ぺこのお腹を満たすため

ウォッカの手料理にかぶりついて食べたのだった。







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