悲劇の中で

廃墟のビル。

その中で私達は、いつものように取引をしていた。

今回の取引は、少し大きな仕事だった。

ガンッ…!!

銃声が、廃墟のビルで響いた。

ゴトッと鈍い音がしたと思ったら、足元に取引相手の体が転がっていた。

「仕事終わりだね☆」

「あぁ…。」

早く帰りたい。
ジンも私も、安心したせいで
もう一人の気配に気づく事ができなかった。

ガンッ!!

「……!!」

気づいた時にはもう遅かった。

弾丸は、規則正しく回転しながらジンに向かっている。

やだ…………

スローモーションで私の瞳に映る弾丸は、さもこの悲劇を私に見せつけんばかりだ。

やだ………っ!!



「いやあぁぁぁぁぁっ!!」

そこで私は、目が覚めた。

「ゆ、夢…?」

「どうしたんだ、麗華!?」

ジンが私の悲鳴に驚いて、駆け付けてきた。

「ジ……ン…。うわぁぁぁ!!」

「な、なんで泣くんだよ!?何があった?」

「ジン…どこにも行かないでね。」

私は、涙を拭いながらジンに言った。

「は…?」

「一人は嫌だよ…。」

「ったく、一人になんかしねぇよ。一人にしたらお前、何するかわかんねぇからな。」

「ひどっ!!」

でも、夢でよかった。

「早く着替えろ。でかい仕事が入ったぞ。」

「うんっ!!」






なんだか、今日はやけに胸騒ぎがする。

今朝見た夢のせいだろうか。

「今回の仕事は、今までの子会社との取引とは訳が違う。裏組織との取引だ。」

「ここ以外に組織あるんだ。」

「裏組織なんて、人間のいる数だけあるぜ。」

ウォッカが、助手席から顔を出して言った。

すると、そうこうしているうちに
目的地へ着いた。

薄暗い、廃墟のビル。

すでに取引相手は来ていた。

「待たせたな。」

「待ちくたびれたぜ、同業者さんよ。」

私は車で待機。
しかし、これも作戦。

ジンが爆弾付きスーツケースを渡し、現金の入った相手のスーツケースを受け取った。

今だっ!!

私は素早く、手に持っていた石ころをジン達から少し離れたドラム缶に投げつけた。

ガンッ!!

「な、なんだ!?」

「誰かに取引を見られたか?」

ジンがそう言うと、相手は顔を険しくした。

「おい、お前ら!!鼠を探せっ!!」

カチャッ……

そう。
これが狙いだ。

相手のボスがうろたえ、目を離した隙にジンが銃口を向ける。
すかさず他の部下も銃口をジンに向けるが

「じ、銃をしまえ。」

ボスの一言で銃を下ろす部下達。

そして、絶好の場所に隠れていたウォッカが
その部下達を始末する。

ガンッ!!…ガンッ!!…

「悪いな。関わった人間は消すのが決まりなんだ。」

「や、やめろ…!!お願いだ!!同業者だろ!?」

「同業者?お前ら下級チンピラ組織と一緒にするな。」

ガンッ!!

「がぁっ!!」

バタッと倒れる相手のボス。

「格が違うんだよ。」

最後は、ジンのカッコイイ台詞でしめられた。

「仕事終わりだね☆」

「あぁ…。」

あれ…………?
…この会話………。

帰ろうとジンが背を向け、歩き始めた。

………だめ…だめ!!
ジンが死んじゃう……!!

「だめえぇぇぇぇっ!!!」

ガンッ!!

私は、みるみる体から力が無くなるのがわかった。

目の前が真っ暗になった。

……ジ…ン。
…………………ジン…。








「…ぃ……ぉい…!!…おい、麗華!!麗華!!」

ぽたっ…ぽたっ…

何か冷たいのもが私の頬に当たった。

ゆっくり目を開けると、大粒の水を目からこぼすジンがいた。

「…ジ…ン。無事…だったんだ…。」

「何馬鹿な事言ってんだっ!!テメェ、撃たれたんだぞっ!!!」

撃た……れ…た?

「お前、一人にするなって言っただろうが!!俺を一人にするのはいいのか!?」

なんで…そんなに泣くの……?

「俺を一人にすんじゃねぇ!!お前がいなくなったら、またウォッカとのむさ苦しい生活に戻るだろうが!!」

はは……。
…で、も…大丈夫…。
ウォッカは…ジンの面倒みて…くれる…よ。

「ずっと闇の中で生きてきた俺には、お前は唯一の光だった。俺は……っ!!麗華、お前が好きだ…っ!!だから…死ぬな……よ。」

さっきより大粒の涙がジンの目からこぼれる。

いつもは、隠れてたりして
はっきり見えないジンの表情。

今は、はっきり見える。

辛く、苦しい表情。


……す…き…?
ジンが…私を……?

「…ジ……ン。」

私は、笑って見せた。

ありがとう…ジン。
…今まで…ありがとう。




すぅ……。すぅ……。

「………………ぇ。」

静かで規則正しいリズムで吐かれる麗華の息。

「あ、兄貴………。」

「………………………。」

「……寝ちゃったんじゃないすか?」

血は出てる。
弾が当たったのは、腹部だが…

いくら急所が外れてるとは言え、この状況で寝るか……?

だが…無事で何よりだ。

俺は、麗華を抱き抱え
車に載せ、急いで組織の医療斑へ向かった。

俺の光……
闇で生きてきた俺には、眩しすぎる光。

医療斑に着き、調べてもらったら
少し手術をしただけで異常はなかった。







*おまけ*

手術待合室。

「兄貴…よかったですね。」

「あぁ。撃たれて寝るくらいだからな。大丈夫だろう。」

「違いますよ。麗華に告白できた事ですよ。」

「……………………ぁ。」

みるみるうちに、顔が熱くなってくるのがわかった。

「うがあぁぁぁ///!!言っちまったぁぁ///!!」

「あと、俺。兄貴の泣き顔初めて見ました。」

「………………。」










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