夏の風物詩




夏の生暖かい風はどこへやら

冷たい風が、震え凍える私の体をさらに冷やす。




夏の風物詩

といえば…………





怪談










時は数分前。


ベル姐は、いつものように陽気に部屋へ入ってきた。

だが、手にはろうそくがいっぱい入ったビニール袋をぶら下げていた。

「何だ。その大量なろうそくは。」

「夏といえば、海!海といえば、スイカ!スイカといえば、かき氷!かき氷といえば、花火!花火といえば、怪談よ!!!」

「「どうやったら花火から怪談になるんだ」」

私達のツッコミもむなしく、ベル姐は勝手にろうそくを立てて火をつけ始めた。

しかし、この大量のろうそく………

もしや

百物語!!??





いやいや、まてえぇい!!

私は怪談は苦手なのだ!!
そんなの聞かされたら私………(T□T)

だが、思ったよりろうそくは少なかった。

数えてみると、13本しかない。

「ベル姐、百物語をやるには少ないよ?」
「今の時代、ろうそくなんて使わないみたいで…これしかなかったのよ。それに13は不吉な数字だし♪」

¨使わないみたい¨って…
ベル姐の実年齢の時代は、ろうそくが灯りだったくらいの時代なんですかι?
(しかも不吉って…
そう思った瞬間、部屋の灯りが消された。

「じゃ、私からいくわよ☆」






昔むかし


一人の男が旅をしていました。

男は小さな村にたどり着き、そこに泊まる事にしました。

この村は女しかいないという噂があった。
噂通り、村には女しか見当たらない。
「すまぬ。旅の者だが、一晩泊めていただけぬか。」

男は一人の若い女に言った。

女は、たいそう美しい姿をしており男は見とれてしまった。

「私の家でよければ泊めてさしあげましょう。」

男は女の家に泊まらせてもらう事にした。



深夜。



暑苦しさで目が覚めた男は、女がいない事に気がついた。
家中を探すが、どこにもいない。

外へ出ると、奇妙な音が聞こえてきた。


グチャ…ブシュ…



音のする方に行くと……」

「ひ…ぃ…(T∧T)」
ウチは、たまらず隣にいたジンの服をギュッと握った。「…なっ…///離れろ///」
「だって……」



「音のする方に行くと……





女が人を食っていたのだ!!!」

「ひ、人食い女ぁ…(泣)」

「男は驚き、逃げようと後ろを向くと…

村の女達が男の逃げ道をふさいでいた。

再び女を見る。

次の瞬間、女の食っていた人間を見て驚いた。



女が食っていたのは




自分




「俺が…食われている…?ぁ、ありえん!!俺はここに…」

「貴方はこの村に来た時から食われていたのです。」

女が言った。
そして他の村の女が言う。

「この村に男がいないのは」

「私達が食べてしまったから。」

「私達は男に飢えているの。」

「男の肉は素晴らしい。」

「素晴らしいから、美味しい。」

「私は、貴方が好きです。」

女が言う。
そして男に近づき、すがりつくような目で男を見た。



「貴方が好きなのです。」

男は、唾を飲む。
たとえ人食い女といえど、容姿は女。

こんな、若く美しい女にすがりつかれては抵抗もできない。



「愛しております。」






「男って愚かね。」

女は男を見下しながら闇の中へ姿を消した。
めでたしめでたし♪」

「「めでたくねぇ!!」」
「うふふ。でも、わかるわこの女の気持ち。本当に惚れた男なら食べてしまいたいくらい愛してしまうものよね。」
「……テメェなら本当に食べかねねぇな。」

うぅ…
怖い、グロい、デンジャラスだ…

と、そこにウォッカが手を挙げた。
(いたんだ…)

「次は俺が話しやす。」

ウォッカの怪談ならあまり怖くはないだろうと、私は握っていたジンの服を離した。


「これはある一人の若い男の話である。



仲の良い二人の友人と遅くまで遊んでいた時のこと。


未成年なのに親の車を拝借して出掛けていると、だんだん見知らぬ風景になってきた。

「おい。迷ったんじゃねぇか?」
「おかしいな…。そんな遠くまで来てねぇはずなんだけど。」
「まぁ、いいんじゃん?探索がてら肝だめししようぜ。」

三人は車から降り、歩き始めた。

木々が生い茂った所だった。
家が見えなきゃ人も見当たらない。


何十分歩いただろうか。
足に痛みが走る。

「なぁ、何もねぇし車に戻ろうぜ。」
「…あ。あれ、人じゃね?」

指差す向こうには一人の女性がいた。

「あの!すみません。俺達、新宿から来たんですけど…道に迷ったみたいで。」
「………新宿?」

女は無表情な顔で男を見た。

「あの…ここは一体どこですか?」


「ここは






あなた達の死場所


樹海。







ひいぃぃ!!!
o(T□T)o

再びジンの服をギュッと掴む。
だが、あまりの恐怖に手まで握っていた。

「ばっ…##NAME1##///」
「ジン〜っ(泣)」
「………///」

私の恐怖も知らずにウォッカは続ける。

「男達は驚いた。

樹海は山梨に存在する。

東京から山梨まで、こんな短時間で移動できるわけがない。

「仲間を待っていました。さぁあなた達も一緒に死にましょう



慌てて逃げる男達。

だが、行く手行く手を塞がれる。
気が付くと、樹海で死んでいった人々で囲まれていた。

首がない人。

口から泡を吹いてる人。

ナイフが刺さっている人。

それぞれが男達を見つめている。

「ぎやあぁぁぁあ!!!」







数日後。
ニュースが流れた。

「樹海で新たに死体が発見されました。東京都に住んでた男子高校生三人の首吊りとの事です。自殺心理学の山下先生、どう思いますか?」
「わざわざ東京から山梨まで来て自殺したという事は、相当深刻で心に深い傷を負っていたのでしょう。」

この森に隠された真実は彼ら以外に知るよしもないだろう。」



「う、ウォッカ…以外と迫力ある話するねι」

未だに手足が震えている。

「くくっ。やっと俺の番だな。」
隣で不気味に笑うジン。
「えっ!!??ジンもやるの!?」
「お前の泣き顔が見たい。」

この超ウルトラスーパードS野郎!!!!
絶対いつか泣かせてやる!!

そんな私の気持ちをよそにジンは話し始めた。

「ある日、一人の若い女が小さな旅館に泊まった。

激安の旅館で評判だった所だ。

激安の旅館なら、内装などが悪かったりするのではないのだろうか。
と、不安を抱きつつも旅館を訪れると
建てたばかりなのではなうかと思うくらい綺麗な旅館だった。

女は満足し、旅館で時を過ごした。


夜。
変な寒気に目を覚ました。

真夏の夜がこんなに寒いわけがないと不思議に思い、体を起こそうとした。

しかし、いくら力を入れても体がビクともしない。

ふと、頭元に何かを感じて目を動かした。

足。

小さな足がある。

その足をたどるように上を見ると、男の子が立っていた。

部屋も窓も鍵は閉めたはず。

一体どこから…

男の子は、やがて女の周りを歩き始めた。

男の子が動くにつれて顔がはっきり見えてきた。

頭から血が流れている。

男の子が女の周りを一周したところで、女の体から何かが浮き出てきた。

男だ。
男が女の体から出てきたのだ。

男は「う゛あぁぁ!!」と叫ぶと姿を消した。

その瞬間、女の体が動くようになったのか
跳ね起きるように体を起こした。

男の子は笑うと、スッと消えてしまった。



翌朝。
目が覚めて、周りを見た。

しかし、昨日の事が嘘のように何もなかった。

夢だったのだと安心して、はぁとため息をつき天井を見る。

その瞬間、女は硬直した。

天井に、昨日の男が張り付けられていたのだ。

「きやあぁぁぁあ!!!」

女は悲鳴をあげ、逃げようと部屋の扉を開けた。

すると、ちょうど中居さんが来ていた。
助けを求めようと口を開くが早いか否や、中居さんが話してきた。
「お客様。当旅館は、真実を知った方はあの世行きとなっております。」








数日後。
一人の若い女が旅館に泊まった。

「きやあぁぁぁあ!!!」

その女の目線の先には、天井に張り付けられた一人の若い女。

そこに中居さんが入ってきた。


「お客様。当旅館は、真実を知った方はあの世行きとなっております。」

「どうだった麗華?」

「気絶寸前よ。」

あぁ………
遠くでジンとベル姐の声がする…。

「くくく。こんくらいでビビってんじゃ組織は勤まんねえぞ。」

「いや……ジンの怪談、グロすぎる…。」

もう泣きそう。

そんな時、後ろから急に声がした。
うらめしや〜……


ぎやあぁぁぁあ!!!!!

ビックリしてジンに抱きついてしまった。

だが、今は恥ずかしがってる場合じゃないよ!!

見ると、ウォッカが脅かしていた。

ウォッカったら、ニヤニヤして…

後で天井に張り付けてやる。


その後も百物語ならぬ十三物語は続いた。

「麗華…いい加減離れろ///」
「だって、ベル姐もウォッカも…急にビックリさせたり、音たてたりするから…。」

結局、私は最後までジンから離れなかった。


*おまけ

その後も、百物語ならぬ十三物語は続いた。

ある意味ハラハラドキドキしてる俺の心臓。
ずっと離れない麗華に、もしかしたらこの鼓動が聞こえるんじゃねぇかと心配になる。


近ぇ………///


ベルモットとウォッカがニヤニヤしながら見てくる。

あの二人…
たくらんでやがったな

だが、めったにこんな麗華と傍にいられる事なんてない。

……………………………………感謝すべきなのか?


寄りかかる麗華を抱きしめたい気持ちを押さえて、黙って怪談を聞いていた。

つづく



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