男女逆転




いつもと変わらぬ朝。
いつもと変わらぬ景色。

だが、ただ一つ。
いつもと違うものがある。

「何で俺がスカートなんか着なきゃなんねぇんだ!!」

時は数分前にさかのぼる。




俺と麗華はいつものように起きた。

今日はやけに体が軽いな…

だが胸に妙な重みを感じていた。

とりあえず、着替えようと鏡の前に立った。
その鏡に映っているのは麗華の姿。

「きゃあぁ!!」

後ろで悲鳴をあげる麗華に驚いて振り向いた。

ベッドの上で目を丸くして驚いているのは………俺?
いつの間にか俺達は入れ替わっていたのだ。
「ちょっ…どういう事!?」
「俺に聞くなっ!!」

とりあえず、入れ替わった事を元に戻るまで誰にも言わない事にした俺達は、これからどうするか考えていた。

「あぁ!!もうこんな時間!!学校行かなきゃ…」

と、そこで麗華の動きが止まった。

「こんな姿じゃ行けないじゃん!!」
「今日は休め。」
「……。」
「…何だ。そのうるうる目は…。」
「ジン…学校行って。」
「はぁ!?行かねぇよ!!」

すると、麗華は目をうるうるさせて
「今日テストなの!!お願い!!」
と言ってきた。

…………んな顔されたら断れねぇだろが。

「ありがとうジン♪じゃ、制服来て。」
「何で俺がスカートなんか着なきゃなんねぇんだ!」
「当たり前じゃん!高校は制服なんだから。」

仕方なく俺は人生初のスカートを着る事になった。

……スースーする…ι





帝丹高校。

学校…。
そういや、前は小学校に行ったな。

クソババァの変な薬で幼児化した俺は、帝丹小学校に行った。

…あのガキ。
よく頭のきれる奴だったな。

そんな事を考えていると、後ろから声をかけられた。
「おはよう麗華。」
「お、おう…。」
「おう…ってιどうしたの?」
「あ、いや…。なんでもないよ。」
髪が少し長い女の子が不思議そうな顔をしてる。
その後ろからショートカットの女の子が顔を出した。
「今日テストでしょ?やんなっちゃうよねぇ。」

はぁ…。
女子高生って気楽だな…

なんて思っていると、3人くらいの男子生徒が近づいてきた。

いわゆる不良と呼ばれる奴らだ。

「お。万年彼氏できない麗華ちゃんじゃん。」
「まぁ、その顔だからな。」
あははと高笑いする不良共。
俺の中で何かが切れた。
「あ゛ぁ?テメェら、人の事言える顔かよ。」

俺が睨むと不良共は一瞬怯んだが、すぐにつっかかってきた。

「何だとコラァ!!調子乗りやがて!!」

一人が拳を固めて殴りかかってきた。

俺がその拳を受け止めて一捻りすると、不良Aはコンクリートの床に叩き落とされた。

「…麗華?」
「あ。やっちまった。」




「麗華って凄いんだね。」
「ビックリしたよ。蘭も顔負けだね。」
「あはは…。」

チャイムが鳴り、ガラガラっとドアを開けて先公が入って来た。

最初は英語のテストらしい。
問題が配られて開始の合図が出た。

懐かしいな…

頭の中の引き出しが動き始める。

5分も経たないうちにテストを書き終えた。

この調子で、俺は全てのテストをやっていった。

テストが終わり、次の授業が始まろうとしていた。
「次は体育だね。着替えよう。」
「えっ、体育!?」

しまった…
体育がある事をすっかり忘れていた…。

さすがに体育は休まねぇといけない。
「今日は体育休むよ。」

「え〜。麗華、ズル休み?」
「あはは。ごめん。」
急いでその場を離れ、保健室に向かった。

保健室は結構離れた場所にあり、走ったため少し疲れた。

……でも、女の体って軽いんだな。

強いて言えば胸が重いくらいで…

って俺は何考えてんだ!!

自分の(?)体を見てみる。

……意外と胸あるんだな///

…って!!
だから、何考えてんだ!!

一人芝居をしてると、誰かが入って来た。
白衣を着た女性だ。

おそらく保健室の先生だろう。

「あら、麗華ちゃん。またズル休み?」

また?
あいつ、いつも休んでんのか?

「あ。ちょうどよかったわぁ。この間の内科検診、休んだでしょ?今やってあげる。」
「えっ、ちょっ…やめろ!!」
「大丈夫よ。女同士だし。」

「やめろおぉぉおお!!」




ハラハラドキドキの学校もやっと終わり、下校。

「疲れた……。」

学校って疲れるものなんだな…。

しかも麗華は、その後に組織の仕事をこなしてる。

……頑張ってんだな。麗華も。

学校の後に歩いて帰るのが凄く疲れる。
いつもポルシェに乗ってるからわからなかった。

たまには歩くのもいいな。

歩きながら見る景色もなかなかいいものだと思いながらコンクリートの道を進んで行った。





アパートに帰ると同時に、先に帰っていた麗華が顔色を変えて走り寄ってきた。

「な、なんだよι急に。」
「ジン……お風呂どうするι?」

…………………………………………………あ。






そして口論は数十分続いた。
「今日は体育やったから、入りてぇの!!」
「明日の朝入ればいいじゃない!!このエロジン!!」
「なっ!!エロくねぇ!!」
「うぅ…。」

お得意のうるうる目で見てくる麗華だが、今は俺の姿をしているため全く可愛くない。
むしろ自分がうるうる目をしている姿は気持ちが悪い。


結局、朝風呂することになり
多少の違和感を感じつつ、その夜は寝た。


翌朝。
昨日の事はウソみたいに体は戻っていた。


つづく



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