親
学校の帰り。
蘭達と別れて細い路地を歩いていた。
タバコ屋の前を過ぎた所で、T地路が現れる。
右を行けば、ジンのアパート。
左を行けば…
………私の家。
そういえば、ジンはお母さんに何て言ったんだろう…。
組織に入る時、ジンに『親には適当な嘘を言って来た。』と言われた。
…会いたいな。
そう思うと、自然と足が家に向かって歩き出した。
だんだん早る気持ちで私の足は速度を増した。
「来ちゃった…。」
家の前で立ちすくむ私。
「…やっぱりダメだよね。」
諦めて帰ろうと振り返った私の目の前にいるのは…
「…麗華!!」
「…お母さん!!」
重たそうな買い物袋を手にぶら下げたお母さん。
「お母さん…っ!!」
たまらず、ウチはお母さんに抱きついた。
「麗華…どうして…。東京に行ったんじゃ…。」
はぁ?
東京ぉ?
「黒澤陣って人が、麗華を今すぐ芸能教育させたいと言って…お母さん、ビックリしたんだから。」
芸能教育って…ι
「でも…よかったわぁ。元気そうで。心配してたのよ。」
「私も会いたかったよ。」
お母さんが優しく頭を撫でてくれる。
ジンが撫でてくれるのも落ち着くけど、やっぱり親の優しさとは違う。
「まぁ。家に入りなさい。今、晩御飯作るから。」
「あ…でも、黙ってここに来ちゃったから…帰らなきゃ。」
絶対ジン心配してる…
「……そう。仕方ないわね。早く帰りなさい。」
………。
嫌だ。
帰りたくない…。
まだ、いっぱい話したい事がある。
お母さんの料理だって食べたい。
「ごめんね…。また来るから。」
「ったく、一度組織に入ったら肉親に会ったらいけねぇの知ってんだろ!!」
帰ったら、案の定ジンに怒られた。
組織に入った者は肉親と会う事は禁じられている。
肉親に会ってるところを警察だの他の誰かに見られたら、肉親をルートに組織の事がバレる可能性があるからだ。
ジンに肉親はいないらしい。
というのも、ジンの事だから親殺してそうだけど…
「ジンにはわからないだろうけど、普通は家族の顔くらい見たくなるんだよ!!人の気持ちも知らないで…!!」
私は、部屋に走りドアの鍵を閉めてベッドにもぐりこんだ。
………バカ。
そのまま、ベッドを涙で濡らしながら深い眠りについた。
「どうするんすか、兄貴?」
「……。」
タバコをくわえてマッチを擦った。
「…様子見てくる。」
俺は部屋に足を向けた。
…鍵がかかってる。
はぁっとため息をつき、ポケットから針金を出した。
そして、鍵穴に差し込み少し動かすとカチャっという音がした。
そっとドアノブを回し、扉を開ける。
ベッドに猫のように丸まった麗華がいた。
麗華の横に腰を降ろす。
「…悪かったな。」
髪をかきあげるとベッドが濡れていた。
……俺はこんなに泣かせたのか。
チクリと心が痛む。
…まだ俺にも心があったんだな。
ふとそんな事を思った。
そして、俺は立ち上がり部屋を出た。
翌日。
私は、よく寝たせいか目覚めがよかった。
居間に行くとジンがタバコをふかしていた。
昨日の事を思い出す。
…言い過ぎたな。
「ジン…。昨日は言い過ぎちゃった。ごめんね。」
「…2泊3日。」
「え…?」
ジンが口から煙をはきながら言った。
「2泊3日だけ親の所に戻っていいぞ。」
「えぇ!?本当!?」
「嘘言ってどうする。」
「ありがとうジン!!」
嬉しくて私はジンに抱きついた。
「は、離れろ…っ///」
「あ…///」
顔が赤くなっていくのがわかった。
急いでジンから離れ、もう一度お礼を言いアパートを飛び出した。
もちろん2泊3日の久しぶりの家族団らんは最高の思い出になった事は言うまでもない。
*おまけ*
「やめましょうぜ兄貴。これじゃ完全に不審者ですぜ。」
「黙れウォッカ!!ただの見張りだ!」
俺と兄貴は麗華の家から少し離れた場所で麗華の家を観察中。
というのも、兄貴が麗華を心配してるだけで…ι
「誰かが麗華に目をつけて組織の存在を知られてみろ!」
そういう兄貴を見て俺はため息をつくしかなかった。
つづく
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