夏の日の君に
「うおぉぉおぉ↑ぉおお↑↑!!??」
小さな居間にウォッカの声が響きわたる。
「耳元で叫ぶな!!」
ジンが耳をふさいで怒鳴った。
「あ、すいやせん…ι」
「どうしたの?ウォッカ。」
私が聞くと、ウォッカは震える手に持った雑誌を指して
「あ…あた…あたた、あた…」
「何だ?北●の拳か?似てないぞ。」
「………あた、当たっちゃいました。」
抜けるような青い空!
白い雲!
青い海!
白い砂浜!
今、私達は海に来ています!
「凄いねウォッカ。懸賞やってたのは知ってたけど。」
そう。
ウォッカは懸賞でこのビーチの無料宿泊券を当てたのだ。
「いいわねぇ〜!海!!若返るわ。」
「何でお前までついて来る…。それに、それ以上若返ったらお前を人間と認めないからな。」
あはは…
しょうがないよ。
チケットは4枚だったんだもん。
…………それにしても…
私は、服の下に着ているモノに違和感を覚える。
「麗華も早く脱ぎなさいよ。」
既にビキニ姿のベル姐。
そして、この服の下に着ているモノも…ビキニ…
「ほら。恥ずかしがってちゃダメよ!!」
ベル姐に引っ張られて私は、しぶしぶ更衣室に………
「じゃ、俺達も着替えやしょうか。」
「………俺は嫌だぞ。」
「ダメっすよ!!ちゃんと兄貴の海パン持ってきたんすから!!それに、麗華を射止めるチャンスですぜ!!」
「…………」
絶対ダメだ…
こんな姿、ジンに見せられない…
「大丈夫よ。すっごくセクシーよ。」
ベル姐に押され、更衣室から出た。
その瞬間、周りの人の視線が私に集まった。
いやあぁぁあ!!!
見ないでぇ!!!
ジンの方を見る。
ジンも着替えたのか、海パン姿…
……!?///
か、かっこいい///
こっちをジッと見てるジン。
「あら。なに麗華の事見つめてるのよ。」
「ばっ…///!!違ぇよ!!」
「赤くなっちゃって(笑)」
うぅ…
恥ずかしい…
さっきまで一緒にいたベル姐は男の人に声をかけられて、どっか行ってしまった。
少しすると、3人くらいの男子が近づいてきた。
「ねぇ、俺達と一緒に泳がない?」
またか…
でも、こういう事に慣れてないせいか、いつもハッキリ言えない。
「え、あの…」
「ほら、かき氷買って来たぞ。」
あぁ…
いつもこうやってジンに助けてもらって…
本当ダメ女だ…
ハイエナも帰って、ジンがかき氷を渡してきた。
「ありがとう…。」
「いちごでよかったか?」
「いや…そうじゃなくて…。いつも助けてくれてありがとう。」
ジンは思い出したようにハッとして
「あぁ。構わねぇよ。」
「私…ジンに助けてられてばっかり…」
すると、頭に何か乗った。
ジンの手だ。
その大きな手で優しく撫でてくれる。
……落ち着く。
「いいんだよ。お前の面倒見るのも俺の仕事だ。」
「ジン…。…ありがとう。」
私はジンの手を取り
「よぉし!泳ぐぞぉ!!」
そのままジンを連れて海に飛び込んだ。
「うはぁ☆楽しかったね。」
「本当(笑)たまには羽を伸ばすのもいいわ。」
「つか、お前はどこに行ってたんだ…。」
夕方。
遊び疲れてホテルに戻るところだ。
「あぁ!!!」
私は、ある事に気が付いた。
「どうした?」
「ペンダント…無い。」
どうしよう!!!
ジンからもらったやつなのに…
「探してくる!!!」
もう一度私は海へ戻った。
「……ベルモットとウォッカは先に戻ってろ。」
何分経っただろうか。
完全に空がオレンジに染まっている。
「…どこで失くしたんだろ。」
どこを探しても見つからない。
と、その時。
首に何か当たった。
見ると、ジンからもらったロケットペンダントが…
後ろを振り返るとジンがペンダントをつけてくれていた。
「ジン…!!どこにあったの?」
「コインロッカーの下にあった。」
あっ!
帰る時、急いでバックを取ったから…
その拍子で落としちゃったんだ…
「ごめん…。ジンがせっかく買ってくれたのに…」
「…コインロッカーに入れるくらい大切にしてくれてんじゃねぇか。」
「……そりゃあ///」
「ふん。帰るぞ。」
笑って背を向けるジンを追った。
「綺麗だね…。」
朝は白かった砂浜が夕陽を浴びて、赤く色づいている。
「ねぇ、ジン。」
「あぁ?」
「今日の私、綺麗だった?」
「はぁ?」
「惚れちゃったり。」
ふざけたつもりだった。
「惚れたぜ。」
「…え?」
「今日のお前…綺麗だった。」
え………?
「 ウソ。」
……………………………………え?
「何だ?真に受けたか(笑)?」
「……っ///!!??…バカアァ!!!!」
「あ。兄貴、お帰り…って(`△´;)えぇ!?ど、どうしたんすか!?頬が赤くなってますぜ!?」
赤くなっているジンの頬。
それは私が打ったから。
女心をもてあそぶなぁ!!
「えぇ!?麗華、兄貴を打ったのか!?なんて命知らずな…。」
「知らないよ!!ジンが悪いんだから!」
私は、ふて腐れて椅子に座った。
「…痛ぇ。」
まぁ。
その後すぐにジンに謝ってもらったから仲直りはしたけどね。
*おまけ*
まだ痛む頬をさすりながら、ケータイを見た。
メールが来てる。
メールを開くと、ベルモットからだった。
『うふふ。私からのささやかなプレゼントよ♪』
本文にはそう書かれていた。
さらに下ボタン押すと、一枚の画像が出てきた。
それは…
…………麗華の水着写真!!
なっ……///!?
つい驚いてケータイを落としてしまった。
不審に思ったウォッカが、そのケータイを拾う。
「ぁ、兄貴///何隠し撮りしてるんですか!?」
「違ぇ!!!ベルモットが送ってきたんだ!!」
あのババァ…
…………………………………感謝していいものか、これは…
俺は、そっとその画像をプライベートフォルダに保存した。
つづく
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